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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 92 - 彼女よりも大切な恋人

Chapter 92

彼女よりも大切な恋人

九条凛はうつむき、罪悪感で胸がいっぱいだった。

高橋美咲は九条凛の言葉を黙って聞き、立ち尽くしていた。胸に広がる失望感に、今にも押し潰されそうだった。

さっき、九条凛が「九条蓮は林家の娘と食事している」と言うのを聞いてしまったのだ。

その林さん……あの日見かけたあの女の子のことだろうか。

やっぱり、彼女と一緒にいることの方が、自分よりずっと大事なんだ。

もう九条蓮に、あの子との関係を問いただす必要もない。九条凛の口から、すでに答えは聞いてしまったのだから。

九条蓮は約束を破った。怒ってもいいし、守らなかったことを罵ってもいい。でも、怒りが過ぎれば何も変わらない。結局、彼はここに現れることはできなかった。

桜井奈緒は、彼女が宴に現れるのを待っている。もし姿を見せれば、きっとあざ笑われるだろう。

ふっと、高橋美咲は口元に無理やり笑みを浮かべ、自分の愚かな期待を嘲った。

小さな声で「大丈夫。もう十分助けてもらったから。ここからは、自分の足で歩くしかないみたい」と言った。

その言葉に、九条凛はさらに罪悪感でいっぱいになった。

高橋美咲のために完璧に準備したはずなのに、結局問題は自分の兄から起きてしまったのだ。

どれだけ高橋美咲が平静を装っても、細い体には落胆と失望がにじみ出ていた。

見ているだけで胸が痛んだ。

九条凛は思わず高橋美咲の手を取り、低い声で「私もどうしてこうなったのか分からない。あんな約束も守れない最低な兄なんて、今すぐクビにしてやる!」と言った。

本当は「兄とは縁を切る」と言いたかったが、高橋美咲はまだ九条蓮の正体を知らない。今ここで明かせば、彼女をさらに傷つけてしまうだけだ。

はあ……やっぱり言えない。兄のことを思い切り罵ることすらできない。

「凛さん、もう帰ろう」と高橋美咲は静かに言った。

九条凛は驚いて「え?もう九条悠真の婚約パーティーに、あのクズと一緒に行かないの?」と聞いた。

高橋美咲は深く息を吸い、首を横に振った。「行かない。あの人たちは私が現れるのを待って、笑いものにするつもりよ。計画が失敗したなら、わざわざ自分から笑われに行く必要はないわ」

彼女はうつむき、身にまとった華やかなイブニングドレスを見下ろした。

ジンニースタイリングのショーピースは気品があり、特別な一着だった。本当に、少しもったいない気がした。

自分は物事をあまりにも単純に、そして美しく考えすぎていた。

九条蓮が九条凛の兄として現れてくれれば、桜井奈緒や九条悠真を打ち負かせると思っていた。でも、やっぱりそう簡単にはいかない。

そもそも、九条蓮とのあの奇妙な結婚は、最初から素晴らしい誤解だったのだ。

今、彼が助けに来られないのなら、責めても仕方がない。

高橋家を出てから、ずっと一人で、すべてに立ち向かってきた。これからも一人で困難に向き合うことに慣れなければならない。

胸の奥がじんわりと痛み、目頭が熱くなった。泣きたくなるなんて思わなかった。

九条悠真の浮気を知って別れたときは、泣きたいなんて思わなかったのに、今はどうしても涙をこらえきれない。

高橋美咲は鼻をすすり、感情を必死に押し殺した。

絶対に負けたりしない。

高橋美咲は踵を返し、宴会場へと歩き出した。背筋は伸びているのに、どこか言いようのない喪失感と、胸が締め付けられるような儚さが漂っていた。

九条凛は小さく悪態をつき、慌てて後を追った。

二人は車のドアを開けて乗り込んだ。九条凛がエンジンをかけて出発しようとしたその時、外から聞き覚えのある二つの声が聞こえてきた――