Chapter 919
世論が逆転し始める
その時、大庭理香の携帯が鳴り、彼女は慌てて電話に出た。
「えっ!お客様が注文をキャンセルしたいって?まずはお客様をなだめて。最悪、値引きしてもいいから…」
結局、大庭理香はどうしようもなく電話を切った。
高橋彩花は先ほどの大庭理香のやり取りをすでに聞いていた。この瞬間、彼女の顔は鍋底のように真っ黒になり、歯ぎしりするほど怒りを露わにしていた。
「高橋部長、さっき下の者が言ってましたが、予約していた高級顧客が何人も全ての注文をキャンセルしたそうです。どうやら、みんなメゾン・ヴェルヌの新作ジュエリーを買いに行くみたいで…。今回のメゾン・ヴェルヌの新商品は本当に大人気です…」
高橋彩花は大庭理香を睨みつけ、大庭理香はそれ以上言葉を続けることができなかった。
実際、大庭理香自身もメゾン・ヴェルヌの新商品を見て、とても美しいと感じていた。顧客が注文をキャンセルしてそちらを買いに行くのも当然だと思った。
今回は高橋ジュエリーが完全に惨敗した形だ。
高橋彩花の顔は怒りで真っ赤だった。先ほどまで高橋美咲側に何の動きもなかったので、てっきり何もできないのだろうと高を括っていた。まさか高橋美咲が大きな一手を隠していたとは思いもしなかった。
今やネット上の世論は完全に逆転していた。
彼女は怒りで爆発しそうだったが、高橋美咲に対してどうすることもできなかった。
その時、大庭理香が少し遠慮がちに「高橋部長、メゾン・ヴェルヌのデザイン、なんだかうちのと似てませんか?」と口にした。
高橋彩花はその言葉を聞いて、高橋美咲の新作デザインをじっくり見直した。確かに自分たちのデザインと同じような輝きを感じる。高橋美咲側の方がより完璧で精巧だが、スタイルは特に似ていて、まるで同じ人の手によるもののようだった。
高橋美咲のデザインに何か問題があるのだろうか?
彼女は急に興奮し、「今すぐ横山悠人を連れてきて!」と命じた。
大庭理香はすぐに踵を返し、高橋ジュエリーの新商品デザイナー・横山悠人を呼びに行った。
その頃、横山悠人はすでにメゾン・ヴェルヌの新商品を目にしていた。自分の作品と非常によく似たそのデザインを見て、一瞬心に動揺が走った。なにしろ、彼の手元にある作品は、安城朝陽の彼女から騙し取ったもので、自分のオリジナルではなかったのだ。
自分のしたことがバレるのではないかと不安だった。
安城朝陽の彼女も単純な女だった。少し甘い言葉をかけて軽くその気にさせただけで、彼女は簡単に騙されてくれた。寝た上に、安城朝陽のデザインまで盗ませてくれたのだ。
その後、横山悠人は安城朝陽のデザインを使って高橋ジュエリーで大金を稼いだ。どうせ安城朝陽のような馬鹿は何もできないだろうと高を括っていた。
まさか安城朝陽がライバル会社のメゾン・ヴェルヌに行き、そこで新作を発表するとは思いもしなかった。このままでは、手元の作品もすぐに尽きてしまい、いずれ自分の正体がバレてしまう。
いや、それまでに何とかして逃げ出さなければ。
どうせ欲しい金はもう手に入れたのだから。
横山悠人が頭の中で計画を巡らせていると、大庭理香がやってきた。「横山デザイナー、高橋部長がすぐに来てほしいそうです。」
横山悠人は目を伏せ、動揺を押し殺して「わかりました。すぐに伺います」と答えた。
…
間もなく、横山悠人は高橋彩花のオフィスに到着した。
高橋彩花は横山悠人を見るなり、遠回しな言い方はせずに本題に入った。「横山デザイナー、今回のメゾン・ヴェルヌのデザインは見た?あなたが以前発表したデザインととても似ているわ。」
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