Chapter 916
私たちに誠実だった?(続き)
森川茉莉の言葉を聞いた安城朝陽は、気まずそうな表情を浮かべ、仕方なく彼女と一緒に片付けを手伝い始めた。
二人はしばらくの間、黙々と作業を続けた。最後には安城が床を掃き、森川茉莉がモップをかけて、ようやくきれいになった部屋を見て、二人はぐったりとソファに座り込んだ。整然とした部屋を眺めて、安城の気分も少し晴れた。
さっき森川茉莉が文句一つ言わずに一生懸命手伝ってくれたことを思い出し、安城は胸が温かくなった。
その時、森川茉莉が立ち上がり、安城の冷蔵庫を開けた。「何か食べるものある?」
一日中働き詰めで、すっかり疲れ切っていた。安城のトラブルのせいで夕飯も食べずに駆けつけたのだ。
安城はうなずいた。「前に買った食材がまだ冷蔵庫に残ってるはず。」
「じゃあ、私が作るから、ちょっと待ってて。」そう言って森川茉莉は食材を持ってキッチンへ向かった。
安城はキッチンで忙しそうに動く森川茉莉の姿を見つめながら、彼女がさっき言ったことを思い返していた。
今日の新商品に関しては、自分も満展の皆も本当に全力を尽くしてきた。もし自分一人のせいで新商品が失敗したら、申し訳なさでいっぱいになるだろう。
そんな身勝手なことはできない。
安城は徐々に勇気を奮い起こし、胸の中の感情を必死に押し殺した。
森川茉莉は手早く簡単な料理を作り、テーブルに運んできた。ビールの栓を開けて安城の前に置き、「安城さん、つらいのは分かってる。何があったのか、全部話して。私が全部受け止めるから。」と声をかけた。
安城の心に、ほんのりと温かさが広がった。普段はあまりお酒を飲まないが、今は本当に息が詰まりそうだった。
森川茉莉の提案に、ようやく気持ちのはけ口ができた気がした。自分の苦しみを聞いてくれる人がいるだけで、嬉しかった。
今の自分には、心の痛みを聞いてくれる誰かが必要だった。
安城は森川茉莉から渡されたビールを手に取り、ぐいっと一口飲み干した。
そして、低い声で語り始めた。「大学時代に彼女と出会ったんだ。最初にアプローチしてきたのは彼女の方で、それから付き合うようになった。あの頃は、俺のデザインの才能をすごく褒めてくれて、いつか絶対に成功するって言ってくれた……」
「でも、そのうち俺のことを野心が足りないって見下すようになった。俺は必死でデザインに打ち込んでたのに。まさか他の男に心を奪われて、しかも俺のデザインまで持っていかれるなんて思わなかった。」
安城の目は赤くなり、もう一度ビールをあおると、自分を責めるように言った。「全部俺がダメだったせいだ。彼女にいい生活をさせてやれなかったし、引き止めることもできなかった。」
そう言って、安城は顔を覆い、絶望的な様子を見せた。
ここまで聞いて、森川茉莉も安城が感情を抑えきれなくなった理由がだいたい分かった。
この期間、森川茉莉も安城と何度も接してきて、彼がどんな人か分かっていた。
安城は社交が得意なタイプではなく、よくいる男のようなロマンチックさもないが、野心も責任感もある、誠実な男だ。
彼女はきっと、他の男に甘い言葉で騙されて、安城と比べてあれがダメだこれがダメだと文句をつけて、結局彼を捨てたのだろう。
そして安城は、彼女を引き止められなかった自分を責めて、感情が爆発してしまったのだ。
少しは希望を持たせてあげなきゃ。
森川茉莉は軽く咳払いをして言った。「もう捨てられたのに、まだ自分が悪かったなんて思ってるの?引き止められなかった自分を責めてるの?どんだけ世界一のお人好しなのよ。」
安城は一瞬固まった。確かに今の自分は、全部自分が悪いと思い込んでいた。だから彼女を引き止められなかったのだと。
でも森川茉莉の言葉で、もしかしたら全部自分のせいじゃないのかもしれないと思えてきた。
You might also like




