Chapter 91
高橋部長は来るのか来ないのか?
通話が終わると、桜井奈緒のもとに銀行口座の番号が届いた。
桜井奈緒は眉をひそめ、目を細めた。
柏木健人をその気にさせるために金を約束しただけなのに、まさか先払いを要求してくるとは。なんてずる賢い!
だが高橋美咲の動画のため、桜井奈緒は苦々しくも大金を柏木健人の口座に振り込んだ。送金が終わると、すぐに柏木健人から次のメッセージが届いた。
「入金確認でき次第、すぐに動画を送る。」
高額の振込は反映に時間がかかるし、柏木健人も彼女を信用していない。何か企んでいるのではと警戒しているのだろう。なら、もう少し待つしかない。
桜井奈緒は少し気を緩め、満足げに口元を上げた。
もうすぐ高橋美咲の動画が手に入る。だが高橋美咲が来なければ、この面白いショーは始まらない。
外の令嬢たちは、みんな彼女のために高橋美咲を袋叩きにするのを待っているのに。
桜井奈緒の唇の端に冷たい笑みが浮かび、再び月島瑠奈に電話をかけた。「月島瑠奈、早く高橋美咲が来てるか見てきて。すぐに報告して。」
月島瑠奈と望月麗奈は吉田美玲スタイリングの服を着て、会場で金持ちの男性を狙っていたが、思いがけず桜井奈緒から電話がかかってきた。
桜井奈緒に外の様子を見てくるよう言われ、二人はしぶしぶながらも逆らえず、指示に従った。
会場を見回したが、高橋美咲の姿はどこにも見当たらない。
仕方なく、二人は邸宅の外まで探しに行くことにした。
…
駐車場では、高橋美咲と九条凛が車の中で待機していた。静かな空間で、時間がやけにゆっくり流れていく。
その時、九条凛のスマートフォンに新しいメッセージが届いた。彼女は慌てて画面を確認し、表情が変わった。
それを見て、高橋美咲が尋ねた。「凛、どうしたの?何かあった?」
「い、いや、何でもないよ…」九条凛はどこか後ろめたそうに笑い、「美咲、ちょっと待ってて。電話してくる。」
そう言って、九条凛は車のドアを開けて外に出た。
九条凛の慌てた様子を見送りながら、高橋美咲は胸騒ぎを覚えた。
もしかして、九条蓮が来られなくなったのだろうか。
すぐに自分を励ました。そんなはずはない。彼は必ず来ると約束してくれた。
でも、さっきの九条凛は本当に動揺していた。何かあったのかもしれない。もしかして、元カレの方で何かトラブルが?
九条凛にはこれまでたくさん助けてもらった。親友として、何もせずにいるわけにはいかない。
少し迷った末、高橋美咲は様子を見に行くことにした。車のドアを開け、九条凛が向かった方へ歩き出す。
その時、九条凛は花壇の前で感情をあらわに電話をしていた。
高橋美咲が近づくと、彼女の無防備な声が耳に入った。
「何ですって!蓮兄が葉山さんと食事中?冗談でしょ?美咲に今日絶対来て助けるって約束したじゃない!来なかったら美咲どうするのよ?もう怒るから!」
高橋美咲は足を止め、眉をひそめた。
九条凛が電話していた相手は九条蓮だったのか?
「待つって?いつまで?もうすぐ披露宴始まるのに、私と美咲をすっぽかすなんてひどすぎる。もしもし?もしもし…」
九条凛は怒りにまかせて通話を切り、思わず口汚く悪態をついた。
ふと顔を上げると、そこに高橋美咲が立っていた。彼女の顔は一瞬で青ざめ、慌てて口ごもった。「美咲、い、今の聞こえちゃった?」
高橋美咲は落ち着いた目で九条凛を見つめた。「九条蓮、もう来ないんだね?」
「美咲、違うの、説明させて…本当は…ううん、違う…」九条凛は長い間言葉を探したが、うまく説明できなかった。
どうやって高橋美咲に、九条蓮が今、葉山家のお嬢さんとお見合い中で来られないのか説明すればいいのか分からなかった。
さっき九条蓮に電話した時、まさか葉山家の娘とお見合い中だなんて言われるとは思わず、あまりの怒りに兄妹の縁を切りそうになったほどだ。
結局、どんな言い訳も力なく「ごめんね」の三文字にしかならなかった。
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