Chapter 906
九条社長を訪ねてきた女性(続き)
「それが……さっき上の階に真壁さんを探しに行ったんですけど、それで……」森川茉莉は大きく息を吸い、「九条社長を訪ねてきた女性を見かけました。その人、どうも九条社長に気があるみたいで、急いでお知らせに来ました」と言った。
高橋美咲の表情が少し曇った。昨夜の電話の女性だろうか?
九条蓮のことはとても信頼しているが、それでも高橋美咲は気になって、様子を見に行きたくなった。彼女は立ち上がり、「二人とも仕事に戻ってて。私はちょっと様子を見てくる」と言った。
高橋美咲はエレベーターで上の階へ向かった。
最近、九条蓮の事業拡大は目覚ましく、メゾン・ヴェルヌを自社から切り離していた。
そのため、二つのフロアには距離があり、高橋美咲は普段上の階の様子を全く知らず、森川茉莉の知らせが必要だった。
真壁直人はオフィスの外にいた。高橋美咲が来ると、すぐに立ち上がった。
声をかけようとした真壁直人を高橋美咲が制し、彼を脇に引き寄せて尋ねた。「真壁さん、九条蓮にお客さん?柏木さん?」
真壁直人は驚いた表情を見せた。「どうして柏木さんだって分かったんですか?」
高橋美咲は口元に微笑みを浮かべた。
九条悠真からあのメッセージを受け取った後、彼女は柏木社長のことを調べていたので、当然その娘・柏木真理子の存在も知っていた。今、九条蓮を訪ねてきたのはきっと柏木真理子だろう。
真壁直人はすぐに察し、軽く咳払いして「九条社長にお伝えしましょうか?」と聞いた。
真壁直人は先ほどお茶を出しに中へ入った時、柏木さんが九条蓮にかなり接近しているのを見ていた。長年九条蓮の側に仕えてきた彼は、こういう女性を何人も見てきた。今回の柏木さんも、他の女性たちと大差ない。
みんな九条蓮を誘惑しようとしているのだ。
高橋美咲はそっと首を振り、「いいえ、静かに様子を見るだけでいいわ」と答えた。
九条蓮のことは気にしないと自分に言い聞かせていたものの、高橋美咲はやはり少し気になってしまい、ついこっそり様子を見に来てしまった。
もし今、九条蓮に見つかったら、自分が小さい女だとバレてしまうのではないか。
だから高橋美咲は、ほんの少しだけ、こっそり覗くだけにしようと決めた。
真壁直人には自分の用事をするように言い、オフィスのドアまで歩いていき、ガラス窓越しにそっと中を覗いた。
…
オフィスの中。
柏木さんは九条蓮を期待に満ちた目で見つめ、微笑みながら「九条社長、あの日はとても楽しくお話しできました。今日は父に頼まれて、協力の件でお話しに伺いました」と言った。
九条蓮は椅子に座り、背筋を伸ばし、深い眼差しで柏木さんを見つめていた。
昨夜、高橋美咲は柏木治が婿探しをしているのではと心配していた。自分が思い上がりすぎかと思ったが、今となっては決して自惚れではなかったようだ。
ちょうど九条蓮が口を開こうとしたとき、外のガラス窓の向こうで小さな頭がひょこひょこと動いているのが目に入った。
九条蓮の口元がゆっくりとほころび、そして柏木さんに「すみません」と言った。
九条蓮は立ち上がり、ドアの方へ歩いていき、そのままドアを開けた。高橋美咲はまだ外にいて、二人の視線が一瞬で合った。高橋美咲はその場で固まってしまい、動けなくなった。
「……」高橋美咲は気まずそうに微笑んだ。「あの……私は……」
高橋美咲が説明しようとする前に、九条蓮が一歩前に出て彼女の腰に手を回し、そのままオフィスの中へ連れて行った。
You might also like




