Chapter 905
九条社長を訪ねてきた女性
九条蓮は高橋美咲に誤解されたのではと心配し、慌てて説明した。「本当に柏木社長に偶然会って、少し話しただけなんだ。美咲、誤解しないでくれ。」
高橋美咲は思わず笑ってしまった。
「私、何も言ってないけど?何を誤解したと思ったの?」と微笑みながら言った。
九条蓮の表情が固まり、少し気まずそうな顔をした。
「まあ、そうだよな。俺ももう既婚者だし、柏木社長が俺に興味を持つはずないか。」
高橋美咲はそうは思わなかった。九条蓮は既婚者であっても、彼ほど優秀な男性はなかなかいない。柏木社長が九条蓮に好意を持つ可能性も十分にあると思った。
だが今は証拠もないので、憶測は控えた。
「まあ、ただの雑談よ。あまり気にしないで。」
九条蓮はふいに目を細め、高橋美咲の顔をじっと見つめてから言った。「本当に誰かが俺を狙ってるかもしれない。そういう事態を防ぐには、別の方法もあると思うんだ。」
高橋美咲は驚いたように九条蓮を見た。
九条蓮は口元に意味深な笑みを浮かべて言った。「子どもを作ろう。そうすれば、誰も継母になりたいなんて思わないだろうし。」
「……」
そんな解決策ある?明らかにひどい案じゃない。
だが高橋美咲が何か言う前に、九条蓮はすでに彼女を抱き上げていた。高橋美咲は慌てて九条蓮の首に腕を回す。「九条蓮、本気でやるつもり?」
九条蓮の答えは、高橋美咲をそのまま部屋に連れて行き、ベッドに放り投げることだった。
……
九条悠真は、自分が送った一通のメッセージで高橋美咲と九条蓮の間に溝ができると思っていた。
だが高橋美咲は想像以上に心が広く、九条蓮を信じ切っていて、そのメッセージを全く気にしなかった。
高橋美咲は再び元気を取り戻し、仕事に打ち込んでいた。
前回、メゾン・ヴェルヌの新作は高橋ジュエリーに及ばなかった。今日、高橋美咲が出社するとすぐに、安城朝陽がいくつかのデザイン案を持って彼女の元にやってきた。安城朝陽は少し緊張した様子で「社長、デザイン案ができました」と言った。
高橋美咲はそれを受け取り、さっと目を通した。
高橋美咲がデザイン画を見ている間、安城朝陽は手をぎゅっと握りしめ、自分のデザインが気に入ってもらえるかどうか不安そうだった。
その張り詰めた空気の中、高橋美咲は手元の図面を置いた。
彼女は顔を上げて安城朝陽を見た。
安城朝陽は一気に緊張し、不安げに「し、社長……何か問題が?このデザイン、大丈夫でしょうか?」と尋ねた。
そんな彼を見て、高橋美咲は思わず笑ってしまった。「安城デザイナー、そんなに緊張しなくていいのよ。」
そう言ってから彼を安心させるように、「とても良いデザインだと思う。すぐに商品化するわ。きっと高橋ジュエリーを上回るはずよ」と伝えた。
安城朝陽は最初、自分の作品が不十分なのではと心配していた。
だが高橋美咲の言葉を聞いて、その不安は徐々に和らいでいった。
高橋美咲自身、皇彩堂アカデミーの卒業生であり、有名デザイナーでもある。彼女が良いと言うなら間違いない。
その時、森川茉莉が慌てた様子で駆け込んできた。「社長、大変です!」
高橋美咲は森川茉莉を見上げ、低い声で「今度は何?また高橋ジュエリーが何か仕掛けてきたの?」と尋ねた。
「い、いえ、そうじゃなくて……社長のことなんです。」
森川茉莉はそう言うと、どこか言いにくそうに高橋美咲を見た。
高橋美咲の目が細くなる。自分のこと?
「もったいぶらずに言って。何かあったなら、はっきり言いなさい。」
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