Chapter 904
君らしくないな
誰がこのメッセージを送ってきたのか?
なぜか、高橋美咲の脳裏にある人物が浮かんだ。
九条悠真だ!
きっと九条悠真が、こっそり九条蓮の写真を撮ったに違いない。
でも、何て言った?加藤東吾社長が婿探しをしていて、九条蓮がもう取り入ってるって?
高橋美咲は気にしなかった。口元に冷たい笑みを浮かべる。九条悠真がずっと自分と九条蓮を引き離そうとしていることは知っていたから、こんなメッセージの意図は明らかだった。
まったく気にせず、そのままメッセージを削除した。
しばらくして、九条蓮が帰ってきた。
ほのかにお酒の匂いがした。高橋美咲はすぐに彼の腕にかかっていたスーツの上着を受け取る。九条蓮を見つめて、「九条蓮、今夜の投資フェアはどうだった?うまくいった?」と尋ねた。
九条蓮は薄く唇を引き結んだ。
実際のところ、あまりうまくはいかなかった。もう九条ホールディングスの看板はない。どんなに将来性のある新会社でも、周囲はその後のことを心配してなかなか手を組もうとしない。
しかも、ほとんどの人が彼の失敗を見に来ているようなものだった。
だが、幸いにも安藤凛の情報を得ることができた。それだけは不幸中の幸いだった。
九条蓮はすべての思いを胸にしまい、そっと首を横に振った。「いや。」
高橋美咲は、九条蓮のことを今日初めて知ったわけじゃない。彼が少し言い淀んだだけで、うまくいかなかったのだとすぐに察したが、どう慰めていいかはやはり分からなかった。
自分の力は限られている。本当はあまり役に立てない。
せめてできることは、九条蓮を励ますことくらい。
ふと、高橋美咲は九条家の大旦那様の言葉を思い出し、「問題にぶつかったら、しっかり向き合って解決するしかないよ。逃げても答えにはならない。大変な時期を乗り越えたら、その先は青空と大海原が広がってる。もう何も怖くなくなるから」と口にした。
さっき仕入れたばかりの知恵を、早速九条蓮を励ますために使ったのだ。
高橋美咲の言葉を聞いて、九条蓮は少し驚いたように彼女を見た。
その視線に気づき、高橋美咲は少し気まずそうに笑い、「九条蓮、なんでそんな顔して見るの!」とふくれた。
九条蓮は思わず笑い出した。「なんか美咲らしくないな。」
「それ、九条家の大旦那様の言葉だもん。」高橋美咲は少し照れくさそうに言い、「励まそうと思ったのに。もう、いらないならいいよ!」と九条蓮を見上げた。
九条蓮はすっと手を伸ばし、高橋美咲を一気に抱き寄せた。
そして顔を寄せ、強くキスをした。「いるよ。妻がこんなに気を遣ってくれるなんて、ちゃんとお返ししないとな。」
高橋美咲は頬をほんのり赤らめ、九条蓮を押し返そうとした。「もう、ふざけないで。」
そのとき、ふと写真のことを思い出した。本当は聞くつもりはなかった。九条蓮のことは信じているし、わざわざ口に出して聞くのは信頼していないみたいで、かえって二人の関係に影響しそうだったから。
でも、高橋美咲は何でも溜め込むタイプじゃない。どんなことでも二人でちゃんと話し合って、誤解を生まないようにしたいと思った。
言葉を選びながら、「九条蓮、大阪で加藤東吾社長が婿探ししてるって……聞いたんだけど」と切り出した。
九条蓮の表情がわずかに変わった。実際、加藤東吾社長が大阪で婿探しをしているのは本当で、さっきの投資フェアでも少し挨拶を交わしたばかりだった。
まさか高橋美咲がそれを知っているとは思わなかった。
今の高橋美咲の口調には、どこか問い詰めるような響きがあった。
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