Chapter 900
九条蓮をどう思う?
しかし九条蓮は、卑屈にも傲慢にもならず、自分の品格を保ちながらも、決して卑しい印象を与えなかった。
期待していたような見世物が見られず、がっかりした人も多かった。
だが一方で、彼を非常に高く評価する者も少なくなかった。「九条蓮のような男なら、きっとこれから大きなことを成し遂げるだろう」と感じていた。
その中の一人が、柏木真理子の父・柏木治だった。
彼は妻との仲も良く、娘は一人だけ。柏木治には悪い癖もなく、ましてや隠し子もいない。だからこそ、婿養子を迎えたいと考えていた。
実際、将来的には柏木グループの資産を娘と婿に譲るつもりだった。ただ、悪意ある者に家を乗っ取られるのを恐れ、自分が資産管理をしているとわざと周囲に言い、婿養子はあくまで働き手だとアピールしていた。
そうした試練に耐えられる男こそ、柏木治の婿にふさわしい。
柏木治は九条蓮とも何度か取引があり、以前から「何もないところからここまで築き上げた九条蓮は本当にすごい」と感心していた。
なにしろ九条家の件は大きな騒動になった。九条蓮が無一文で出て行ったことを知らない者はいない。
「真理子、お前は九条蓮をどう思う?」柏木治は隣にいる娘に目を向けた。
その時、柏木真理子も父のそばに立っていた。
最近紹介された男性たちに満足できず、今日の投資説明会には優秀な若手が多く集まると聞き、将来の相手を探すつもりで父についてきていた。
柏木真理子は父の言葉を聞き、その視線を追った。
「九条蓮…?」と小さくつぶやいた。
九条蓮のことは以前から何度も耳にしていた。前回は九条蓮の甥・九条悠真とお見合いまでした。九条蓮と九条悠真は年齢も立場も大きく違うが、その差は歴然だった。
柏木治は「九条蓮は、私が一番評価している次世代の若者だ。少し時間を与えれば、将来は多くの人を追い抜くだろう」と言った。
柏木真理子も九条蓮には好印象を持っていたが、噂も耳にしていた。
「でも、九条蓮のそばには今、女性がいるって聞いたし、もう結婚してるんじゃないの?」とためらいがちに言った。
九条蓮と高橋美咲の関係は、今やほとんど公然の秘密だった。
柏木家の娘として、柏木真理子にはプライドがあり、愛人になるのは絶対に嫌だった。
それを聞いた柏木治は特に否定もせず、ただ笑って「男なら誰だって何人か女性がいるものだ。大事なのは、将来誰が彼の隣に立つかだ」と言った。
「それもそうね…」柏木真理子は高橋美咲のことを思い出し、「高橋美咲は高橋家の娘だけど、家族と仲が悪いって聞いたし、あまり大したことないんじゃない?」と口にした。
実際、柏木真理子は高橋美咲と自分を比べて、全く敵わないと思っていた。
少なくとも家柄では自分の方が上だ。
他の面については、実際に高橋美咲に会ってみないと分からない。
柏木治は大きく笑い、「それならなおさら心配いらない。高橋美咲は高橋家から見捨てられているんだから、君の敵じゃない」と言った。
柏木真理子は九条蓮を頭からつま先まで改めて見つめた。仕立ての良い黒いスーツに、シャツのラインが美しい肩を際立たせている。全身から気品と優雅さが漂っていた。
その姿に、柏木真理子はすっかり心を奪われた。
たとえ高橋美咲がすでに九条蓮のそばにいたとしても——
それでも少し不安が残り、柏木真理子は「でも…彼が受け入れてくれるかしら?」と尋ねた。
柏木治は自信たっぷりに鼻で笑い、「柏木家の莫大な財産があって、君ほど美しい娘がいるのに、心が動かない男なんているものか。自信を持ちなさい」と言った。
柏木真理子は自分に自信があった。美貌だけでなく、家柄も一流。これだけの条件なら、断る男はいないはずだ。
九条蓮が断る理由なんてない。高橋美咲なんて——
ふん、相手にもならない。
柏木治は柏木真理子の肩を軽く叩き、「さあ、九条蓮に挨拶しに行こう」と優しく声をかけた。
You might also like




