Chapter 896
彼女を九条蓮に押しつけて
柏木お嬢様はもともと何か理由をつけて席を立ちたいと思っていた。そこへ別の女性が九条悠真のもとに現れたのを見て、バッグを手に立ち上がり、「悠真さんには他にもご友人がいらっしゃるようですし、私はこれで失礼します」と言った。
そう言って、柏木お嬢様はその場を後にした。
九条悠真は高橋彩花を見て眉をひそめた。「どうしてここに?」
「悠真さん、あの人とお見合いしてたの?本当に他の女性と付き合うつもりなの?もう私のこと好きじゃなくなったの?前はあんなに仲良かったのに、私のこと好きだったでしょ?」
高橋彩花はそう言いながら、そっと九条悠真の胸元に手を伸ばした。
九条悠真は彼女の手を掴み、背筋を伸ばして冷たい口調で言った。「ただの遊びだよ。男女のちょっとした戯れだ。本気にしたのか?最近高橋ジュエリーに投資した分で十分だろう。」
高橋彩花の目が翳った。確かに九条悠真は少しは援助してくれた。
だが、それだけじゃ足りない。全然足りない!
もっと多くを手に入れなければ、今まで自分が犠牲にしてきたものが無駄になってしまう。
高橋彩花の目が揺れ、「さっきの柏木お嬢様、結婚相手を探してるみたいよ。この機会に彼女を九条蓮に近づけたらどう?そうすれば九条蓮は柏木グループに縛られるし、悠真さんも彼に潰される心配がなくなるわ」と言った。
九条悠真の目が鋭くなり、一瞬冷たい光が走った。
そんなこと、今まで考えたこともなかった――柏木お嬢様を九条蓮に近づける?
最近、九条蓮には徹底的に押さえ込まれている。せっかくまとめた取引も、すぐに九条蓮に横取りされる。お互い潰し合い寸前なのに、どうしても九条蓮には敵わない。
それに高橋美咲も九条蓮に夢中で、九条悠真には見向きもしない。
さらに、最近の九条智久の動きも苛立たしく、仕事もうまくいかず、八方塞がりの気分だった。
さっきは一瞬、もう妥協して柏木お嬢様を受け入れてしまおうかとさえ思った。
だが今、高橋彩花の言葉を聞いて、まるで霧が晴れたように頭が冴え渡った。
もし九条蓮が柏木お嬢様とくっつけば、高橋美咲はきっと傷つく。その時に彼女が九条蓮を離れれば、自分にもチャンスが巡ってくる。
柏木お嬢様については――
柏木治も相当な策士だと聞く。表向きは婿を募集しているが、実際は柏木グループの将来を餌にして、婿をこき使うつもりらしい。実はすでに資産の大半は別に移してあることも、業界では有名だ。
将来、資産が他人の手に渡ることは絶対にない。もし九条蓮がそんな大きな罠に嵌れば、面白い展開になるだろう。
そうなれば、九条蓮がいつまでも華やかに振る舞えるはずがない。
考えれば考えるほど愉快になり、九条悠真の口元には笑みが深まった。
隣の高橋彩花を見やると、その目にはもう冷たさはなく、どこか柔らかさが宿っていた。「彩花、いい案を出してくれたな」と優しく言った。
その言葉に高橋彩花は嬉しそうに微笑み、さらに九条悠真に身を寄せた。今度は九条悠真も彼女を避けることなく、彩花の胸は高鳴った。
母の計画も悪くないのかもしれない。これでまた九条悠真とやり直せる、復縁できるはずだと確信した。
高橋彩花は九条悠真の腕に身を預け、「悠真さん、私、全力でお手伝いするから」と甘えた声で言った。
九条悠真の目が陰り、次はどうやって柏木お嬢様と九条蓮を引き合わせるかを考え始めた。
どうやって仕掛ければいい?
その時、高橋彩花の声が響いた。「明後日、大阪で投資フェアがあるでしょ?九条蓮も行くはずよね?」
九条悠真の目が輝いた。
高橋彩花は続けた。「柏木お嬢様も今、結婚相手を探してるし、ああいう場には野心的な若手が集まるから、きっと彼女も顔を出すはず。絶好のチャンスじゃない?」
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