Chapter 895
九条悠真、お見合いの席に現る
「それに高橋美咲も、今は九条蓮と一緒に会社を経営して絶好調だけど、二人の関係に亀裂が入れば、仕事にも必ず影響が出るわ。そうなれば、もうあなたと争う余裕なんてなくなるはずよ。」
高橋彩花は話を聞くほどに目が得意げになっていった。高橋花の作戦は完璧だと思えた。
まさに一石二鳥どころか、何重にも得をする話だ。その時には高橋美咲を押さえつけ、九条悠真も取り戻せる。
最高だ。
「お母さん、いい知らせを待ってて!」
高橋彩花は自信に満ちた笑みを浮かべ、レストランの中へと歩いていった。
…
レストランの中。
九条悠真は無理やりこのお見合いに連れてこられていた。九条智久は、最近九条ホールディングスが停滞気味だと感じていた。悠真が会社を引き継いでから、かなりの人員整理を行い、その影響で九条ホールディングスも多少のダメージを受けていた。
最近、九条智久は業績回復のために色々と策を練っており、ちょうど柏木社長が婿を探しているという話があったため、悠真をここに送り込んだのだった。
もし柏木家と親戚関係になれれば、九条ホールディングスも大きな後押しを得られる。
だが、九条悠真にとっては全く違う見方だった。やっと若き九条家の御曹司になったのに、九条智久のやり方は自分の権力を独占し、会社から追い出そうとしているようにしか思えなかった。
もし本当に婿入りなんてしたら、今後は何をするにも義父の顔色をうかがわなければならない。自分の裁量なんてなくなってしまう。今の立場の方がよほど気楽だ。
だからここに来ても、表情はほとんど変わらなかった。
どんなに柏木お嬢様が美しくても、心は全く動かない。早くこの退屈なお見合いを終わらせたいだけだった。
とはいえ、九条智久の顔を立て、柏木家に無礼がないように、紳士的に柏木お嬢様を食事に誘った。
実は柏木お嬢様自身も、九条悠真とのお見合いにはあまり乗り気ではなかった。
来る前に九条悠真の過去を調べており、一度結婚歴があると聞いていた。二度も結婚した男性は自分の好みではなかった。
絶対に離婚歴のある男性が無理というわけではないが、今の九条悠真は九条ホールディングスでも特に目立つ存在ではない。最近勢いのある九条蓮の方がよほど魅力的に思えた。
九条蓮も九条ホールディングスを離れたと聞いていたが、彼は並外れた胆力でゼロから事業を築き上げ、今や会社は大きく成長している。かつて父も彼を褒めていたことがあり、その時に一度だけ九条蓮を遠くから見かけたことがあった。
完璧に仕立てられたスーツに身を包み、ワイングラスを手にしたその男は、スラックスが信じられないほど長い脚を際立たせ、近寄りがたい冷ややかな気品を漂わせていて、目を離せない存在感があった。
そんな明らかな比較対象がいるせいで、今の九条悠真を見ると、どうしても物足りなさを感じてしまい、あまり興味も湧かなかった。
要するに、どちらもお互いにさほど関心がなく、ただ形だけのやり取りをしているだけだった。
その時、不意に一人の女性が九条悠真の隣に腰掛けた。彼女は彼の腕に手を絡ませ、にこやかに「悠真さん、偶然ね。ここで食事してたの?それに、こちらの方は?」と声をかけた。
柏木お嬢様は高橋彩花の方を見て、戸惑いの色を浮かべた。
その瞬間、高橋彩花は柏木お嬢様に微笑みかけて「こんにちは、高橋彩花と申します。九条悠真さんの……」と言った。
彼女はそこで言葉を切ったが、その絶妙な間が十分に意味深な想像を誘った。
柏木お嬢様の目がわずかに動いた。
九条悠真はもともと柏木お嬢様とのお見合いに乗り気ではなかったため、高橋彩花が現れても拒むことはなかった。ただ椅子にもたれかかり、何の説明も弁解もせず、無表情でいた。
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