Midnight FableMidnight Fable

裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 89 - 九条悠真は高橋家の婿

Chapter 89

九条悠真は高橋家の婿

大阪、九条家本邸。

九条蓮は冷ややかな視線でスマートフォンを見やった。画面には、九条凛から一分前に届いたメッセージが表示されている。彼は画面をロックし、ポケットにしまった。

高級なスーツに着替えると、瞬く間に九条ホールディングスの卓越した代表取締役、九条蓮へと戻る。

出かけようとしたその時、九条家の大旦那様が現れ、「蓮、今日は林さんと会う約束を忘れたのか?」と声をかけた。

「東京に戻ります。」

「馬鹿を言うな!」九条家の大旦那様の表情が険しくなり、冷たく鼻を鳴らして言った。「今日どんな大事な用事があろうと全部キャンセルしろ。必ず林さんに会いに行くんだ!」

そう言うと、隣に控えていた明おじさんに向かって「明おじさん、蓮と一緒に行ってくれ」と命じた。

九条蓮の眉間に深いしわが寄る。

明おじさんが同行するということは、九条家の大旦那様が自分を見張らせるつもりだということだ。

明おじさんは大旦那様の右腕で、決して情に流されず、命令だけを忠実に遂行する人物だ。

明おじさんは一歩前に出て、にこやかに「蓮様、参りましょう」と声をかけた。

城のような邸宅のボールルームでは、グラスが鳴り響き、ゲストたちが乾杯を交わしていた。華やかで賑やかな雰囲気が広がっている。

九条悠真はワイングラスを手に、ビジネス界のトップ層にいる数人の社長たちと熱心に談笑していた。

自分の婚約披露宴にこれほどの大物たちが集まっているのを見て、九条悠真はまるで権力の頂点に立ったような気分になり、明日には九条蓮を蹴落として九条家を自分の手に収められるのではないかとさえ思った。

「九条マネージャー、ご婚約おめでとうございます。」

「いえいえ、加藤社長、こちらこそ十分なおもてなしもできず恐縮です。」九条悠真は手を差し出して握手した。

その時、誰かが「ところで九条マネージャー、今日は九条代表取締役もいらっしゃるんですよね?」と尋ねた。

「ええ、普段なかなか九条代表取締役にお目にかかる機会はありませんからね。今日はご婚約ですし、叔父様でもあるので、きっと顔を出してくださるでしょう、ははは…」

「九条代表取締役は毎日数えきれないほどの案件を抱えていらっしゃいますから、まだお時間が取れないのも当然です。もう少し待ちましょう。」

「確かに、私がせっかちでした。」

皆が笑いながら社交辞令を交わす中、九条悠真の表情は曇っていった。

この経営者たちは表向きは自分に礼儀正しく接しているが、実際は全員が九条蓮目当てで来ているのだ。

彼らは九条蓮に会えず、自分もまた会えない。

ふん!九条蓮は人を見下し、何度も自分を弄んできた。いつも忙しいと言っては期待させ、結局は出張に行ってしまう。

九条蓮が来るかどうかなんてどうでもいい。今一番大事なのは高橋家だ。

この後、高橋家が現れさえすれば、皆が自分が高橋家の婿だと知り、態度も一変するはずだ。そうなれば、自分が将来有望だと認められ、今度は皆が自分に媚びを売るようになる!

今日を境に、もう九条蓮に取り入る必要なんてない。これ以上、彼に頭を下げるつもりはない!

だが、もし九条蓮が自分と高橋家のつながりを見て、九条インターナショナルの大型案件を任せてくれるなら、それはそれで悪くない。

九条悠真が賑やかに談笑している一方で、九条沙耶香も数人のマダムたちと華やかに会話を楽しんでいた。

九条沙耶香は鮮やかな赤のチャイナドレスに身を包み、華やかなメイクを施して、マダムたちの間を軽やかに立ち回りながら愛想よく話していた。

「九条夫人、悠真さんは高橋家の婿になるって本当ですか?」

「ええ、その高橋家って、もしかして大阪の高橋家じゃないですよね?」

「もし本当に高橋家の婿になったら、それはすごいことですよ。」