Chapter 868
高橋美咲、初陣で勝利を収める(続き)
「ただ…九条悠真とはあまり接点がなくて…。」
高橋花は娘の頬を両手で包み、「うちの娘はこんなに綺麗なんだから、九条悠真だって目があるわよ。絶対に惚れるって。」と励ました。
その言葉に高橋彩花は自信を取り戻し、顎を上げてうなずいた。
「ママの言う通り。男なんて所詮男よ。私のやり方で落とせないはずがないわ。」
「私が九条家の若奥様になったら、高橋美咲が私の前で偉そうにするなんて絶対に許さない。もう二度と都心で立ち上がれないようにしてやる!」
絶対に、二度と高橋家に戻ってきて自分のものを奪われるなんてことはさせない。
…
メゾン・ヴェルヌがオープン直後から好調な滑り出しを見せ、高橋美咲も興奮していた。
一日中忙しくて、ほとんど休む暇もなく、ずっと店頭に立ち続けていた。ここはもう自分のブランドであり、かつて高橋グループにいた時とは違う。もし九条蓮が入口に現れなければ、退勤時間だということも忘れていたかもしれない。
みんなも一日中働き詰めで、きっと疲れているはず。高橋美咲は森川茉莉に声をかけた。
「今日はみんな本当にお疲れさま。先に上がってもらっていいわ。」
森川茉莉はドアのそばに立つ男性をちらりと見て、にやりと笑いながらうなずいた。
「はい、店長。それじゃ、私たちは先に失礼します。」
若い女性のからかうような笑みに、高橋美咲の耳の先がほんのり赤くなった。仕事終わりに彼氏が迎えに来るなんて普通のことなのに、九条蓮はあまりにも目立ちすぎる。
安い服を着ていたとしても、隣のデザイナーズショップの男性モデルたちと並んでも、ポスターのモデルよりもずっと目を引いてしまうのだった。
モールの中では、彼に視線を向ける人が絶えなかった。
高橋美咲は急いで手元の作業を終わらせ、彼のもとへ歩み寄った。
「どうしてここに?」
「新しい会社を立ち上げたばかりで、やることが山積みでしょう?」
九条蓮は彼女の表情を見るなり、顔つきが柔らかくなり、瞳にきらめきが宿った。
「今日は新店舗のグランドオープンだろう?お祝いに来ないわけにはいかないよ。」
高橋美咲は少し驚いた様子だった。「知ってたの?」
だがすぐに考え直した。柏木真理子が九条のお祖父様まで呼んで宣伝を手伝ってくれたのだから、九条蓮が経営状況を知っていても不思議ではない。
ただ、彼女が知らなかったのは、九条のお祖父様は実際には九条蓮にこのことを一切伝えていなかったということだ。九条蓮は今日いくつもの予定をキャンセルし、実際に午後ずっとモールにいたのだった。
そして午後ずっと高橋美咲の様子を見守っていた。
彼はメゾン・ヴェルヌというブランドが彼女にとってどれほど大切か知っていたし、現場で何かあれば自分がいれば何とかできると考えていた。
もし何事もなく順調にいけば、最後に顔を出して彼女を連れ出し、初陣の勝利を祝って盛大な食事に連れて行くつもりだった。
「もうレストランの予約は済ませてある。高橋さん、ご一緒していただけますか?」
九条蓮は紳士的に身をかがめて誘った。その仕草に高橋美咲は顔を赤らめ、慌てて店のドアを閉め、彼の手を取って外へ引っ張り出した。
「もう、もう、みんな見てるから。」
九条蓮はただ優しく微笑み、彼女をそっと抱き寄せた。
「何を恥ずかしがることがある?俺たちはちゃんとした公認の関係だよ。」
食事中、高橋美咲はメゾン・ヴェルヌの今後の展望について色々と語った。
最初の店舗は何よりも基盤をしっかり築くことが大切だ。高橋彩花の店は全く脅威にならないし、そもそも二つの店は別のモールにある。
ハイラインモールの客層は丸の内プロスパーセンターよりも購買力が高く、趣味も洗練されている。
You might also like




