Chapter 865
オープニングセレモニー(続き)
九条蓮……?
高橋美咲は目を見開いた。まさか九条蓮だったとは思いもしなかった。最近はお互い仕事で忙しく、ゆっくり会う時間もなかった。でも、九条蓮は自分のことで忙しい中でも、ちゃんと自分のことを気にかけてくれていたのだ。
高橋美咲の胸に熱い思いがこみ上げてきた。今すぐ九条蓮にキスしたい気分だった。
オープニングセレモニーが終わったら、絶対に九条蓮にちゃんとお礼を言いに行こう。
日向美亜は微笑んで「高橋店長、こちらで一緒に写真を撮りましょう」と声をかけた。
九条蓮が日向美亜を連れてきてくれたと知った高橋美咲は、それ以上何も言わず、彼女と一緒に店の入口で記念撮影に応じた。
日向美亜の芸能界での地位は、普通の芸能人とは比べものにならない。ゴールデンスタンダード賞を4年連続で受賞するなんて、一般人には到底手の届かない栄誉だ。
日向美亜が現れると、それまで様子見だった高橋美咲側の見物客たちも一気に盛り上がり、みんな彼女を一目見ようと押し寄せてきた。
その様子を見て、高橋美咲は思わず口元に微笑みを浮かべた。
さっきまで人は集まっていたものの、みんな様子見の雰囲気だった。おそらくメゾン・ヴェルヌのこともよく知らず、どんなブランドなのか分からなかったのだろう。でも日向美亜が現れたことで、多くの人がメゾン・ヴェルヌに注目し始めた。
その時、高橋美咲は日向美亜の首元に何もつけていないことに気づき、そっと声をかけた。「日向さん、ぜひ店内へ。うちの看板ジュエリーをお付けします。」
日向美亜はもともと応援のために来ているのだから、ここのジュエリーを身につけて宣伝するのは当然だ。彼女は何の異論もなく、軽くうなずいて高橋美咲と一緒に店内へ入った。だがその時、思いがけず背後でざわめきが起こった。
二人は同時に振り返った。
そこには、気品と風格に満ちた女性が高橋美咲の方へ歩いてきていた。その姿を見た瞬間、高橋美咲はすぐに態度を改め、丁寧に接した。もし間違いなければ、あれは柏木真理子夫人だ。ご主人はとても重要な人物で、夫婦仲も非常に良い。柏木真理子夫人は社会的にも大きな影響力を持つ存在で、高橋美咲も時々テレビで見かけて印象に残っていた。
彼女もジュエリーを見に来たのだろうか?
柏木真理子夫人はすぐに高橋美咲の前まで歩み寄った。高橋美咲は失礼のないよう、すぐに丁寧に挨拶した。「柏木夫人、オープニングセレモニーにお越しくださったのですね?」
「ええ、そうよ!」柏木真理子夫人はうなずいた。
「あの……九条蓮さんにご案内されたのですか?」高橋美咲はおそるおそる尋ねた。
柏木真理子は首を横に振り、意味ありげに微笑んだ。「私を呼んだのは九条蓮さんじゃないのよ」
高橋美咲は驚きで固まった。九条蓮でないなら、一体誰が?
その時、高橋美咲の隣にいた森川茉莉が小声で促した。「店長、早く柏木さんを中にご案内しましょう。外でお待たせしちゃいけません」
森川茉莉の言葉で高橋美咲は我に返った。今となっては、誰が柏木真理子を招いたかは重要ではない。柏木真理子の来店は自分にとって何の害もなく、むしろ店の格を上げてくれるのだから、大歓迎だ。
高橋美咲は柏木真理子に「柏木さん、どうぞ中へ。うちのジュエリーをご紹介させてください」と声をかけた。
そうして二人は店内へと歩いていった。
…
一方その頃、高橋彩花は大庭理香にもう一度宣伝を頼み、徐々に人が集まり始めたことで、ようやく少し気分が落ち着いていた。しかし、高橋美咲の店の様子だけはどうしても気がかりだった。
高橋彩花はさっき大庭理香に「高橋美咲の店をしっかり見張って、何か変わったことがあればすぐに報告して」と指示していた。
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