Chapter 859
九条蓮の太ももにすがって
「えっ!」森川茉莉が目を見開いて驚き、「社長、もう契約も済ませたのに、もしキャンセルされたら契約違反じゃないですか?」
それを聞いた高橋美咲は、苦笑いを漏らした。
「向こうは契約違反してでも私に店舗を渡したくないみたい。もう他の準備はほとんど整ってるのに、店舗がなくなったら全部やり直し。時間も人手も無駄になっちゃう。」
何より、店舗の入札に成功してあんなに喜んでいたのに、お祝いも終わらないうちに問題が起きるなんて、天国から地獄に突き落とされた気分だった。
九条蓮は眉をひそめて、「その店舗を落札したのはどこのモールだった?」と尋ねた。
高橋美咲は彼が助け舟を出そうとしているのが分かったが、すでに調べていた。あのモールの株主は外国人で、簡単に話が通じる相手ではない。だから高橋彩花もお金で動かしたのだろう。
彼女は沈んだ声で言った。「あのモールは丸の内プロスパーセンター。オーナーは外国人なの。蓮さんは知らないでしょ?」
九条蓮もその人物は知らなかったが、丸の内プロスパーセンターが開発中なのは把握していた。
落ち込む高橋美咲を見て、九条蓮は「美咲、心配しないで。この件は僕に任せて。何とかしてみせる」と声をかけた。
本当は自分の力で何とかしたかった高橋美咲だったが、結局また九条蓮に頼ることになってしまった。
彼女は申し訳なさそうに目を伏せ、「蓮さん、ごめんね。また心配かけて……」とつぶやいた。
高橋美咲の言葉を聞いた九条蓮は、「そんなこと言うなよ。僕たちは夫婦だろ?支え合うのが当たり前だ。最初から僕が手伝うべきだったのに、手を貸さなかったせいで君が困ることになった。反省しないといけないのは僕の方だよ」と返した。
九条蓮がこんなに言葉上手だとは思わず、高橋美咲は胸がいっぱいになった。
だからこそ、彼女はさらに安心して九条蓮の助けを受け入れることができた。
「蓮さん、どうやって助けてくれるの?あのモールには裏口なんてなさそうだけど……まさか変な手を使うつもりじゃないよね?」と高橋美咲は興味津々で尋ねた。
実は、九条蓮が自分のために何か犠牲を払うのではと少し心配でもあった。それは望んでいないし、損失の方が大きい。
九条蓮はすでに解決策を思いついていた。穏やかに口元を緩めて、「丸の内プロスパーセンターの関係者は本当に知らないけど……」と話し始めた。
高橋美咲が口を開く前に、九条蓮は続けた。「でも、隣のモールの関係者なら知ってる。隣のモールで一番いい店舗を用意できるよ。丸の内プロスパーセンターの店舗にも劣らないはずだ。」
隣のモール?
高橋美咲が疑問に思う間もなく、森川茉莉が突然叫んだ。「九条社長、隣のモールって……もしかして豊洲ハーバーモールのことですか?」
九条蓮は軽くうなずいた。「そう、その通りだ。」
高橋美咲は森川茉莉を不思議そうに見つめ、豊洲ハーバーモールについてあまり詳しくない様子だった。
森川茉莉は興奮を抑えきれず、「社長!今回は本当にラッキーですよ。隣の豊洲ハーバーモール、知ってます?丸の内プロスパーセンターの2倍の規模なんです。どうして丸の内プロスパーセンターがまだ完成していないのにテナント募集を始めたか、分かります?」と語った。
高橋美咲はそんな裏事情があるとは思わず、驚きの表情を浮かべた。
森川茉莉は続けた。「それは、もし豊洲ハーバーモールが完成したら、丸の内プロスパーセンターのお客さんを奪われるかもしれないから、先に市場を押さえたいんですよ。」
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