Chapter 853
高橋美咲、思いがけない人物と遭遇
翌日、高橋美咲と森川茉莉は荷物をまとめ、すぐにオークション会場へと向かった。
高橋美咲がこの場所を選んだ後、森川茉莉はどんなブランドがオークションに参加するのかなど、さらに詳しい情報を集めてくれた。これで高橋美咲も、どんな競合がいるのか把握できた。
車の中で、彼女は資料に載っている参加ブランドのリストに目を通した。どれも名の知れたブランドばかりで、資金力も十分にありそうだ。明らかに資金不足とは無縁の相手ばかりだった。
間違いなく、これから厳しい戦いになる。
だが、高橋美咲は気落ちしなかった。最初は何事も大変だと分かっていた。今はまだメゾン・ヴェルヌの知名度は高くないが、いずれ大阪で誰もが知るブランドになると信じている。ジュエリーを買うならメゾン・ヴェルヌ、と言われる日が必ず来るはずだ。
この店舗は、新しく建設されたショッピングモールで公開オークションにかけられている。モールはほぼ完成しており、繁華街のど真ん中に立っている。オープンすれば、どれほどの人通りになるか想像に難くない。
ショッピングモールはまだ一般公開されていない。今日中に入れるのは、オークションに参加するブランドの関係者だけだ。
高橋美咲は仕事用のパスを持って中に入った。
ブランド関係者用の席に向かって歩いていくと、思いがけない人物を目にした。
高橋彩花と、そのアシスタントの大庭理香だった!
二人もここに来ており、明らかにオークションに参加するつもりだ。高橋美咲は、それも当然だと思った。これほどの立地のショッピングモールなら、本気でブランドを育てたい企業は誰もが狙うはずだ。
彼女は眉をひそめ、自分の財布の中身をもう一度心の中で確認した。本当に自分が欲しい店舗を落札できるのか、不安がよぎる。
その時、大庭理香が高橋美咲を見つけ、高橋彩花にすぐ合図を送った。「高橋マネージャー、あそこにいるの、高橋美咲さんじゃないですか?何しに来たんでしょう?」
大庭の言葉に、高橋彩花もすぐ高橋美咲の方を見た。高橋美咲と森川茉莉の姿を確認すると、目を細めた。
今日は店舗のオークションで、入場しているのは全員ブランド関係者だ。高橋美咲がここにいるということは、間違いなく入札に来たのだろう。高橋グループを離れた後で、また一からブランドを立ち上げようとするとは思わなかった。
今や九条蓮も何も持っていないし、高橋美咲が彼に頼り続けることもできない。
高橋彩花は心の中で冷笑した。今日ここにいるのは、どれも資金力のある有名ブランドばかり。高橋美咲が太刀打ちできるはずがない。
「放っておきなさい。あんなにお金があるとは思えないし、落札なんて無理よ」と高橋彩花は冷たく言い、視線を外した。
大庭理香は少し不安そうに「高橋社長も今日来てますけど……もしかして……」と口にした。
高橋正人は今日、高橋彩花と一緒にオークションに来ていた。高橋彩花のブランドのために新しい店舗を探しているのだ。高橋美咲も高橋正人の娘なので、高橋正人が高橋美咲を助けるのではと大庭は心配していた。そうなれば、高橋美咲の失敗を笑えなくなってしまう。
高橋彩花の表情が一瞬で曇った。そのことをすっかり忘れていた。
高橋正人はトイレに行っていて、まだ高橋美咲の姿を見ていない。もし見かけたら、何が起こるか分からない。
だがすぐに、高橋彩花は対策を思いついた。彼女は立ち上がり、「今すぐお母さんに電話して、お父さんを家に呼び戻してもらうわ。そうすれば高橋美咲を助ける心配もない」と言った。
大庭理香は親指を立てて「高橋マネージャー、さすがです」と褒めた。
高橋彩花はスマホを持って人気のない隅に移動し、高橋花に電話をかけて、高橋美咲にここで会ったことを伝えた。高橋花はすぐに同意した。
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