Chapter 850
九条蓮が高橋美咲に描く未来
高橋美咲は目を見開き、九条蓮を信じられないような表情で見つめた。
どういう意味なの?
「九条蓮……」
九条蓮は続けた。「もう決めたんだ。会社で俺を手伝ってくれてもいいけど、美咲には自分のキャリアを諦めてほしくない。せっかく皇彩堂アカデミーを卒業したんだから、自分のブランドは続けて、俺は俺で会社をやる。」
「えっ、でもあなた……」
高橋美咲が言いかけたところで、九条蓮が遮った。
「美咲、まず俺の話を聞いて!君はもうデザインで十分な実績を残してきた。それを捨てるなんてもったいない。メゾン・ヴェルヌは九条インターナショナルのサブブランドにすればいい。君はこれからもデザインを続けられるし、2人で手を取り合って、もっといい未来を目指せる。」
高橋美咲はしばらく何も言えなかった。
会社を辞めたとき、せいぜい九条蓮のアシスタントになるくらいだと思っていた。まさか自分のキャリアや情熱をそのまま続けさせてくれるなんて思いもしなかった。胸が熱くなった。
九条蓮は本当に素晴らしい人だ。
彼女はそっと九条蓮を抱きしめて、優しく言った。「うん、2人で一緒に、もっといい未来を目指そう!」
……
こうして、九条蓮の会社「九条インターナショナル」は大阪で華々しくスタートを切った。
九条蓮が九条ホールディングスを離れた後も、真壁直人や井上勝、水城圭介たちは彼のもとを離れず、引き続き支え続けた。
一方、高橋美咲は森川茉莉や相沢紫苑を連れて、九条蓮の会社でメゾン・ヴェルヌを再始動させた。
九条家の内紛や会社の大きな人事異動を知った多くの人は、九条蓮がこのまま落ちぶれて、失意のうちに消えていくと予想していた。だが、数ヶ月間身を潜めた後、彼は新会社を立ち上げ、再起を図る姿勢を明らかにした。
九条蓮が将来成功すると思う者もいれば、すぐに撤退するだろうと見る者もいた。
だが世間に知られないうちに、九条蓮はすでにいくつかの大きな契約をまとめていた。
しかもそれらは九条悠真の手から奪い取ったもので、九条智久は九条悠真を厳しく叱責した。もともと九条蓮はその業界で大きな影響力を持っており、多くの人が彼に好印象を抱いていたのだ。
最初、九条悠真は最近自分のビジネスを何度も横取りしている相手が誰なのか全く分からなかった。
何度も情報を集めてようやく、それが九条蓮だと知った。
さらに詳しく調べると、九条蓮は九条ホールディングスに戻るつもりはなく、自分の会社を立ち上げていたことが分かった。
九条悠真はかつて九条蓮を恐れていたが、今はまったく怖くなかった。すぐに九条蓮の会社へ向かった。会社は現在も採用活動中で、真壁直人以外にはほとんど人がいなかった。
真壁直人は九条悠真を見るなり、すぐに立ち上がって彼を止めた。「九条悠真さん、九条社長にお会いになるにはご予約が必要です。」
九条悠真が東京にいた頃、真壁直人に何度も止められたことがあった。今もなお自分を止めるとは、と九条悠真の顔はたちまち険しくなり、怒りで歯ぎしりした。「目が見えないのか?俺を止めるなんて、今の俺の立場が分かってないのか?」
そう言うと、九条悠真は真壁直人を押しのけ、奥のオフィスへと足早に向かった。
九条悠真は勢いよくオフィスのドアを開け放った。九条蓮はパソコンに向かって作業していたが、物音を聞いてようやく気だるげに顔を上げ、入り口に立つ九条悠真を見やった。
彼は険しい表情のまま、ドアの前に立っていた。
真壁直人はすでに追いついており、「九条社長、先ほどは止めきれませんでした」と困ったように言った。
「いいよ。君はもう下がってて。」九条蓮は真壁直人にそう言った。真壁直人が部屋を出ると、九条蓮は九条悠真を見て、「九条悠真、九条インターナショナルに何か用か?」と尋ねた。
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