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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 85 - 敗北の退場

Chapter 85

敗北の退場

店長が料金を免除すると言ったとき、桜井奈緒は特に口を挟まなかった。

どうせ自分のお金じゃないし、月島瑠奈と望月麗奈の前で自分の影響力を見せつけて、もっと憧れさせることができる。悪い話じゃない。

店長もどうしたらいいかわからずにいた。

桜井奈緒は九条悠真の婚約者。こちらも下手に怒らせるわけにはいかない。

店長は吉田美玲のもとへ駆け寄り、小声で「オーナー、この方は九条悠真の婚約者です。九条悠真は九条ホールディングスの…」と耳打ちした。

店長が自分の身分を持ち出したのを聞いて、桜井奈緒は得意げな表情を浮かべた。

これでオーナーも自分の立場に気づいて、態度を改めるだろうと待ち構えていた。

隣の月島瑠奈と望月麗奈も背筋を伸ばし、オーナーがさっき桜井奈緒の身分を知らなかったから高橋美咲の味方をしたのだろうと思い込んでいた。

「高橋アシスタント、このオーナー、あなたにこんな態度を取るなんて。後で九条社長にしっかり話しておいた方がいいですよ。」

「本当よ、信じられないくらい失礼だわ。」

桜井奈緒は余裕の笑みを浮かべて「さっきは私のこと知らなかっただけよ。私はそんなに器が小さくないから」と大人ぶって言った。

その瞬間、吉田美玲はあからさまにうんざりした顔で「九条悠真の婚約者だからって何?今日ここに天の神様が来たって関係ないわよ!」と冷たく鼻で笑った。

どんなに他の誰がすごくても、九条凛には敵わない。

彼女こそが本物の九条家のお嬢様。誰を怒らせてもいいが、彼女だけは絶対に怒らせてはいけない!

しかも九条凛の隣にいるのは、噂で聞いたところによれば、将来の九条ホールディングス社長夫人、九条蓮の妻だという。

この二人の生き仏に媚びずに、まだ結婚もしていない女のご機嫌を取るなんて、絶対にありえない。

桜井奈緒は吉田美玲の言葉を聞いて、顔色が一気に真っ青になった。

なぜ吉田美玲が九条凛の言うことだけを聞き、自分をまったく相手にしないのか、全く理解できなかった。

自分の身分を明かしても、吉田美玲は完全に見下したままだった。

吉田美玲は店長を一瞥し、「早くお金を回収してきなさい。回収できなかったら、あなたが自腹で払うのよ」と言い放った。

店長の顔は真っ青。そんな大金、自分が払えるはずもない。

すぐに店長は月島瑠奈と望月麗奈のもとへ行き、今度は一転して冷たい表情で「まさか踏み倒すつもりじゃないでしょうね?払わないなら警察を呼びますよ!」ときっぱり言った。

二人は、桜井奈緒の身分を明かしても結局自分たちで払わされるとは思ってもみなかった。

その場で固まってしまった。

「じ、じゃあもういりません…」と小声でつぶやいた。

店長はにっこりして「それでも構いませんが、本日のレンタル料はいただきます」と返した。

「ええっ!」と二人はまた叫んだ。「まだ一歩も外に出てないのに、レンタルにならないでしょ!こんなの詐欺よ!」

「レンタル契約はサインした時点で成立しています。早期返却でも料金は発生します。クレジットカードの分割払いと同じ原理です」と店長は淡々と説明した。

今や誰の味方をすべきか、店長は完全に理解しており、二人には一切容赦しなかった。

結局、店長がスマホを取り出そうとしたところで、二人はしぶしぶ顔をしかめながらクレジットカードを差し出して支払うしかなかった。

どうせ払うなら、いっそこのままレンタルしてしまおうと腹をくくった。もしかしたら桜井奈緒の婚約パーティーで本当に王子様を見つけて、元が取れるかもしれない。

桜井奈緒は顔を真っ赤にして、完全に面目を失った気分だった。

もう一秒もその場にいられず、怒りに任せてすぐに店を飛び出した。