Chapter 846
高橋美咲、退職の決意を伝える
話が決まったので、九条蓮も高橋美咲の意思を尊重することにした。立ち上がって「美咲、ゆっくり休んで。俺が皿を洗ってくる」と言った。
そう言うと、高橋美咲の返事も待たずに自分で食器を片付け始めた。
キッチンで忙しく動く九条蓮の姿を見て、高橋美咲は彼が本当に素晴らしい人だと感じた。権力があった時は遠くから仰ぎ見る九条蓮だったが、今は家庭に戻り、彼女のために皿を洗うこともできる。九条蓮は本当に人生を託す価値のある男性だと思った。
普通の男性なら、こんな状況になればきっと心が折れてしまうだろう。しかし九条蓮は違った。
高橋美咲は、九条蓮なら必ず成功すると確信していた。
食事が終わると、それぞれ自分の部屋に戻った。
九条家の大奥様は九条家の大旦那様を見て、「さっき美咲さんが言ってたこと、どう思う?」と尋ねた。
高橋美咲がいなくなると、九条家の大旦那様はさっきまでの冷たさが嘘のように、正直に「俺がどうこう言うことはないさ。蓮のそばに信頼できる人がいてくれるのはいいことだ。負担も減るし、美咲さんはとても適任だと思う」と答えた。
高橋美咲のことを思い返し、九条家の大旦那様は少し感慨深い気持ちになった。
半月前までは高橋美咲と何かと対立していて、この女のことが好きではなかった。しかし、まさかこんなにも状況が変わるとは思っていなかった。今や自分たちが高橋美咲の家に住んでいるのだ。
よく考えてみれば、高橋美咲は本当に良い人間だった……
自分も人を見る目を誤ることがあるのだと感じた。一方で、九条蓮は最初から高橋美咲を信じて選び続けてきた。蓮の方がよほど見る目があった。
九条家の大奥様は九条家の大旦那様の言葉を聞いて思わず笑ってしまった。さっき美咲さんに聞かれた時は、全然そんなこと言っていなかったのに。年を重ねるごとに口だけはますます頑固になる。結局この人は、口ほどでもないのだと思った。
…
翌日、高橋美咲は高橋グループに出社し、自分の仕事の整理に取りかかった。
その頃、高橋グループのオフィスでは、高橋彩花が大庭理香と話していた。
高橋彩花は大庭理香を見て尋ねた。「理香、高橋美咲の今の状況、どう思う?」
九条ホールディングスの資産争いは大きな騒動となり、大阪で知らない人はいないほどだった。
少し前、東都キャピタルの件で自分が大恥をかき、周囲から何日も嘲笑されていた。ここ数日は会社でも居心地が悪く、みんなが陰で自分を笑っているのではと疑心暗鬼になっていた。さらに追い打ちをかけるように、高橋美咲と九条蓮が復縁したと知ったのだ。
これで全ての謎が解けた。東都キャピタルの西園寺社長が突然高橋美咲を助けた理由も、実は九条蓮が裏で動いていたからだったのだ。
あまりの悔しさに、ドレッサーを叩き壊してしまったほどだった。
だがその後すぐに、高橋彩花は九条ホールディングスで何かが起き、九条蓮が追い出されたことを知った。今や九条ホールディングスは九条悠真の手に渡っている。九条悠真は高橋美咲の元恋人だが、それはもう過去の話。高橋美咲はとっくに九条蓮と一緒になっているのだから、今さら九条悠真に戻るはずもない。
つまり、たとえ高橋美咲が今も九条蓮と一緒にいたとしても、もう意味はない。九条蓮のことで祖父との立場が脅かされる心配もなくなったのだ。
大庭理香は高橋彩花の言葉を聞くと、すぐに「高橋マネージャー、九条蓮はもう九条ホールディングスを追い出されて何も残っていません。高橋美咲も彼と一緒に苦労するしかないですよ。もうあなたの立場に影響を与えることはありませんし、高橋美咲には後ろ盾もない。高橋グループはこれからも高橋マネージャーの思い通りです!」と答えた。
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