Chapter 843
九条家の大旦那様を家に迎える
高橋美咲は九条蓮を見上げた。「私、高橋家に戻って、母の持っていた株を取り戻して、それでお祖父様たちにもっといい家を用意しようかと思うの。」
かつて高橋恵は高橋正人と一緒に事業を始め、美咲にも多くを遺していた。
高橋花に高橋家を追い出されてから、美咲は一度もそれを取り戻しに行ったことがなかった。
高橋美咲の言葉を聞いた九条蓮は、彼女をそっと抱き寄せた。
顎を彼女の頭に乗せて、「君のものは当然取り戻すべきだ。でも、君のお金で家を買うわけにはいかない。そうしたら、女に養われる男と変わらないだろう?」
心の中で、少し困ったようにため息をついた。
美咲の目には、自分はそんなに落ちぶれて見えるのだろうか。
高橋美咲は首を振った。「九条蓮、私たちは夫婦よ。お祖父様もお祖母様も、私の家族でもある。たしかに前は色々あったけど、今はそんなこと言っていられない。お祖父様もお祖母様ももう年なんだから、こんな狭い部屋で一緒に暮らしたら気が滅入って体まで壊しかねないわ。」
寝室のドアの外で、九条家の大奥様と九条家の大旦那様は黙って立っていた。
九条家の大旦那様は、さっき高橋美咲が言ったことを聞いていて、胸が熱くなった。
まさか高橋美咲が、これまでのわだかまりを捨てて自分たちのことを考えてくれるとは思わなかった。これまで彼女に対して不満ばかりだったのに、今やあの女性が遺した財産に頼ることになるかもしれない。
九条家の大旦那様が胸を打たれないはずがなかった。
だが、あの女性のことを思い出すと、九条家の大旦那様がさらに気がかりなのは九条久遠のことだった。何年も植物状態のまま入院している九条久遠の医療費も、今の自分たちには大きな負担だ。家すらない今、九条久遠の治療費はどうすればいいのか。
部屋の中では、高橋美咲と九条蓮がまだ家のことで言い合っていた。そこへ九条家の大旦那様が勢いよくドアを開けた。「もうお前たちはこれ以上言い争うな!」
「お祖父様!」高橋美咲は固まった。
まさか九条家の大旦那様がドアの前にいて、しかも話を聞かれていたとは思わなかった。しかも自分が九条蓮の腕の中にいることに気づき、慌てて彼を押しのけて顔を赤らめた。
九条家の大旦那様は低い声で言った。「ここで暮らすのも悪くない。もう他のことはしなくていい。わしはここにいると決めた!」
九条家の大奥様は心の中で小さく鼻で笑った。
さっきまであれほど狭いだのみすぼらしいだの文句を言っていたのに、手のひら返しが早いこと。
「そうよ。お祖父様も私も、ここに住むと決めたから、あなたたちはもう余計なことしなくていいの。」と九条家の大奥様も横から口を挟んだ。
九条蓮は、そもそも高橋美咲にそのお金を使わせたくなかった。今、九条家の大旦那様が口を挟んだことで、高橋美咲を説得する口実ができた。
九条家の大旦那様は高橋美咲を見つめ、冷たい表情でたしなめた。「今は多少落ちぶれているかもしれんが、うちが孫の嫁に養ってもらうほど困ってはいない。わしを笑い者にするような真似はやめてくれ!」
九条家の大旦那様の表情は厳しかったが、「孫の嫁」という言葉を口にしたのを聞いて、高橋美咲の胸には熱いものが込み上げてきた。
高橋美咲はそっと「わかりました、九条のお祖父様」と答えた。
九条蓮の口元にはうっすらと笑みが浮かんだ。祖父が心から高橋美咲を受け入れてくれたのだと分かった。ただ、こうした態度は長年の癖で、変わるにはもう少し時間がかかるのかもしれない。
…
その日、高橋美咲に人前で平手打ちされた九条悠真は、どうしても納得がいかなかった。
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