Chapter 831
九条蓮が用意したサプライズ
すべてがあまりにも自然に起こったため、高橋美咲はつい最悪の方向に考えてしまった。
もしや九条悠真も九条家の大旦那様の毒殺に関与していたのではないか――高橋美咲はそう推測した。表向きは九条芽衣がやったことになっている。どんなに調べても、決して九条悠真には辿り着かない。そうすれば、九条蓮を排除し、九条ホールディングスを手中に収めることができる。
九条悠真がそんなギャンブラーのような気質だからこそ、あそこまで大胆になれたのだろうか。
「美咲、どうした?」九条蓮の声がした。
九条蓮は高橋美咲が少し目を伏せて何か考え込んでいるのを見て、九条芽衣のしたことに精神的な影響を受けているのだろうと思った。
高橋美咲はそっと首を振った。「なんでもないよ……ただ……」
視線の端で九条のお祖父様をちらりと見やり、その意味は明白だった。
九条蓮はすぐに察し、小声で九条のお祖父様に言った。「お祖父様、美咲は出てきたばかりで、しかも今回の件で犯人を突き止めるのに協力してくれました。きっと疲れていると思います。今日は先に連れて帰ります。明日また伺います。」
九条家でこんなことが起きて、九条のお祖父様も気分が晴れない。高橋美咲に構う余裕もなかった。
「ああ、二人とも帰りなさい。」
「お祖父様、また……明日伺います。」高橋美咲は静かにそう言ってからその場を離れた。
九条のお祖父様がまだ何も言わないうちに、九条蓮は素早く高橋美咲の手を取って連れ出し、不意を突かれたように見えた。
二人の姿が完全に見えなくなった頃、九条のお祖父様は鼻を鳴らして言った。「あのガキめ!そんなに急いで逃げて……まるで私が嫁を食べるとでも思ってるのか!」
九条蓮は高橋美咲を車に乗せ、自分も運転席に戻ってエンジンをかけた。
二人はそのままマンションへ戻った。
一緒に部屋へ入る。
慣れ親しんだ空間に戻り、高橋美咲はようやく気が抜けた。ソファに腰を下ろし、全身の力が抜けるほど疲れを感じていた。
九条芽衣のしたことは、本当に予想外だった。
九条蓮は隣に座り、たくましい腕で高橋美咲を一気に抱き寄せた。「九条芽衣は普段は用心深くて臆病なのに、こんなことをするなんて。どうして急に一か八かに出たんだ?」
「誰かにそそのかされた?」
九条蓮はふいに尋ねた。「さっきお祖父様の前で、何か言いそびれたことがあるんじゃないか?」
高橋美咲は彼を見た。「確かに、お祖父様の前では言えないことがあった。どうしても、あの毒殺事件は単純じゃない気がする。九条悠真が無関係とは思えない。」
九条悠真が混乱の中で九条ホールディングスを手に入れたが、これまで毒殺事件と結びつけて考えたことはなかった。しかし九条芽衣の一件があって、高橋美咲は疑わざるを得なくなった。
九条蓮は高橋美咲の言葉の前半だけで、後半の意図まで察していた。
口元に嘲るような笑みが浮かぶ。
ふん、九条悠真……
九条蓮の目が鋭くなり、殺気が滲む。「ああ、九条悠真は間違いなく関わっている。」
高橋美咲は、九条芽衣が九条悠真と手を組むとは思いもしなかった。彼と数年付き合ってきて、どんな人間かは知っている。頭も手腕もあるが、裏切りは当たり前。彼と組むのは一度きりが限界だ。
その後は、少しでも脅威になりそうな存在は徹底的に消し去るだろう。
九条芽衣の不祥事が明るみに出た後、九条悠真が自分だけきれいに手を引いたやり方を見ても、この件がただ事ではないのは明らかだった。
高橋美咲は言った。「九条芽衣はあなたが欲しい、九条悠真は会社が欲しい。ひとりは人を、ひとりは権力を。二人の利害が一致したから、こんなに急で綿密な計画になったのね。」
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