Chapter 830
どうしてそんなに私を憎むの
九条芽衣の目に陰りが差した。彼女は九条蓮と一緒になることなんて、最初から考えたこともなかった。
彼女がしてきたことは、すべて九条蓮のためだった。九条蓮が幸せでいてくれれば、それだけで満足だった。
九条凛はまだこの事実を受け入れきれずにいた。九条芽衣が九条蓮を好きだなんて、あまりにも異様で、衝撃的だった。
ようやく我に返った九条凛は言った。「ねえ……九条芽衣、あなた一体何を考えてるの?どうして私の兄を好きになれるの?だって彼は……彼はあなたの……」
そこまで言って、九条凛は言葉を詰まらせた。
「やっぱり、恩知らずのろくでなしはどうしようもないな!」九条家の大旦那様が鼻で笑った。九条芽衣を見て、「毒を盛ったのはお前自身か、それとも徹が指示したのか?」と問いただした。
九条芽衣は首を振り、力なく言った。「全部私がやりました。父には関係ありません。」
自分のしたことがすでに明るみに出ても、彼女は九条徹を巻き込む気はなかった。すべて自分一人の責任だと背負った。
九条芽衣の言葉を聞いて、九条家の大旦那様の目の冷たさがようやく和らいだ。
幸い、九条家が本当にそこまで冷酷になったわけではなかった。すべては九条家と血の繋がりのない九条芽衣一人の仕業だった。それだけでも、少しは救われる思いだった。
その時、病室のドアが突然開き、九条徹が勢いよく入ってきた。九条芽衣の前まで来ると、いきなり手を振り上げて彼女の頬を激しく叩いた。「このろくでなしめ、よくもこんなことを!お前のせいで俺は死ぬ思いだ!あの時、俺が孤児院からお前を引き取って九条家の娘にしてやったから、食うにも着るにも困らずに済んだんだぞ。何が不満でこんなことをしたんだ!」
九条徹はそう言い終えると、九条家の大旦那様の前にドサリと膝をつき、涙と鼻水を流しながら泣き叫んだ。「お父さん、俺は何も知らなかったんだ。このろくでなしがあなたにこんなことをするなんて思いもしなかった。信じてくれ!俺は本当に無実なんだ!」
九条家の大旦那様に毒を盛ったのが九条芽衣だと知った九条徹は、自分まで巻き込まれるのではと恐怖に震えていた。
九条家の大旦那様は、これが九条徹とは無関係だと分かっていた。手を振って「もういい。俺の前で泣きわめくな」と言った。
九条家の大旦那様の言葉を聞いて、九条徹はようやく安堵の息をついた。
九条家の大旦那様は冷たく鼻を鳴らした。「子の過ちは親の責任だ!芽衣がこんなことをしたのも、お前の教育がなっていなかったからだ。」
「お父さん、俺が悪かった。ちゃんと育てられなかった。」九条徹はもう何も言い返すことができず、何度も頭を下げた。
九条徹と九条家の大旦那様のやり取りで、部屋にいた全員がようやく、九条芽衣が実は九条家の実子ではなく、九条徹が孤児院から引き取った養子だったことを知った。だからこそ、あんな考えを持つこともあり得たのだ。
やがて、すべてが明るみに出ると、九条芽衣は連れて行かれた。
部屋の空気は重苦しいままだった。皆がそれぞれ思いに沈み、誰も口を開かなかった。何を考えているのか、誰にも分からなかった。
高橋美咲はわずかに眉をひそめた。なぜか分からないが、この件はまだ終わっていないような、何か見落としているような気がしてならなかった。
本当に九条芽衣一人だけの犯行だったのだろうか。
それにしても、どうしてこのタイミングで九条悠真が九条ホールディングスを手に入れることができたのか。
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