Chapter 827
芝居を打ってもらう必要がある(続き)
高橋美咲はほとんど迷うことなく、すぐに「分かった、絶対に協力する」と答えた。
九条芽衣にされたことは、あまりにもひどすぎた。
絶対に許せるはずがない。
最近の混乱を経て、九条ホールディングスは九条智久と九条悠真の管理下で徐々に落ち着きを取り戻していた。
その頃、九条芽衣は自室で苛立った表情を浮かべていた。スマホでニュースを見て、怒りに任せてベッドに投げつけた。
以前、九条悠真に「九条家の大旦那様に手を出せ」と言われたとき、彼女は素直に従った。何かあれば九条蓮が戻ってこられると思っていたからだ。だが、九条悠真は彼女を騙していた。九条家の大旦那様が倒れた後、彼はその隙に九条ホールディングスをすべて手中に収めてしまったのだ。
当時、九条悠真と話したときは録音も何も残していなかった。今になって彼が全てを自分に押し付けてきたら、百の言い訳をしても説明しきれない。
しかも、父親はまだ自分が九条家の大旦那様に毒を盛ったことを知らない。もし知られたら、絶対にただでは済まない。
考えれば考えるほど、九条芽衣の気分は沈んでいった。後ろめたさから、九条家の大旦那様のもとへ顔を出す勇気もなかった。
九条家の大旦那様の容体も分からないが、今のところ命に別状はないというニュースもなく、それだけが唯一の救いだった。
九条芽衣は考えた末、やはり一度九条家の大旦那様の様子を見に行く必要があると感じた。
まずは様子を探り、その後のことを考えよう。
三十分後、九条芽衣は病院に到着した。
身分を告げると、すんなりとVIP入院フロアに通された。病室に入ると、思いがけない人物がいた——高橋美咲だった。
高橋美咲は九条家の大旦那様のベッドのそばに座っていた。彼女もお見舞いに来ていたのだ。
他には誰もいなかった。
九条芽衣の目が一瞬だけ揺れた。高橋美咲は九条家の大旦那様の毒殺未遂で逮捕されたはずでは?どうしてもう出てきているの?
驚きと疑念でいっぱいだったが、すぐに平静を装った。
九条芽衣は高橋美咲に歩み寄り、「高橋美咲、九条家の大旦那様の件はまだ調査中なのに、どうしてもう出てこられたの?何をしたの?」と問い詰めた。
九条芽衣のあからさまな追及に、高橋美咲はただおかしくて仕方がなかった。
自分の顔を見て、さぞかし動揺しているだろう。
九条芽衣の本性を知った今、高橋美咲の目には彼女がまるでオスカー女優のように見えた。もし九条芽衣が映画に出なければ、あの演技力は本当にもったいない。
もし九条蓮から九条家の大旦那様に毒を盛ったのが九条芽衣だと聞かされていなければ、絶対に彼女を疑うことはなかっただろう。
心の中の思いを抑え、高橋美咲は冷静に言った。「九条家の大旦那様に毒を盛ったのは私じゃない。だから出てきて当然でしょ?」
「あんた……」
九条芽衣が言いかけたところで、高橋美咲は続けた。「それに……九条蓮が海外から有名な医師を呼んでる。九条家の大旦那様はもうすぐ目を覚ますし、そうなれば私の無実も証明されるはずよ。」
高橋美咲の言葉を聞いた九条芽衣の表情が変わった。
心の奥底に不安が広がる。高橋美咲の話が本当か嘘か分からないが、ここ数日家でも落ち着かず、今また彼女の言葉で不安がぶり返した。
「九条芽衣、顔色悪いけど大丈夫?」高橋美咲は口元に微かな笑みを浮かべ、心配そうに九条芽衣を見つめた。
「大丈夫よ!お祖父様が目を覚ますなんて、本当に嬉しいわ。」九条芽衣は強がって言った。
高橋美咲は思わず吹き出しそうになった。九条芽衣を嘲るように冷たく言い放つ。「九条芽衣、よくもまあ、そんな嘘ばかりついて疲れないの?」
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