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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 821 - なぜより良い道を選ばないのか(続き)

Chapter 821

なぜより良い道を選ばないのか(続き)

九条悠真は美咲が心変わりしたのかと思い、期待して次の言葉を待った。だが彼女はこう言った。「あなた、何か勘違いしてる。私が蓮と出会ったとき、彼の本当の身分なんて知らなかった。」

「あの時、彼が九条インターナショナルのただのアシスタントだと思ってたけど、それでも私は彼を見下さなかった。今、彼がどん底に落ちても、私は彼を見下したりしない。あなたが何度来ても、私の気持ちは変わらない。」

「もっといい道が目の前にあるのに、なぜ選ばない?なぜわざわざ苦労する道を選ぶんだ?」

「一緒にいる人が、それだけの価値があるからよ!」

九条悠真は怒りで顔色を変えた。美咲の性格は分かっている。今日何を言っても無駄だ。

九条悠真は自分でも十分我慢してきたと思っていた。美咲が蓮と一緒にいたことも気にせず、何度も自分を選ぶチャンスを与えてきた。

ほんの少しの未練がなければ、こんなふうに美咲をなだめることもなかっただろう。

美咲がどうしても蓮と苦労したいというなら、どんな道を選んだのか思い知らせてやる。後で彼女が泣いてすがりついてきても、もう二度と振り向いてやるものか!

結局、九条悠真は怒りをあらわにしてその場を去った。

九条凛は高橋美咲に離婚届へサインさせることに失敗すると、すぐに九条蓮のもとへ戻り、その報告をした。

「お兄ちゃん、美咲さん、サインしなかったよ。」九条凛は九条蓮の顔色をうかがいながら、高橋美咲がどれほど揺るがず、どれほど深く九条蓮を想っているか、すべてを伝えた。

高橋美咲は九条蓮に対して一途だった。どんなに彼が落ちぶれても、決して彼のもとを離れようとはしなかった。そのことを、どうしても九条蓮に知ってほしかった。

高橋美咲の言葉を聞いて、九条凛自身も胸を打たれた。九条蓮がその言葉を聞けば、きっともっと心を動かされるはずだと思った。

九条凛はそっと九条蓮を見上げたが、残念ながら彼の表情には何の変化もなかった。落ち着き払った様子で、何を考えているのかまったく読み取れず、九条凛はだんだん不安になってきた。

思わず「お兄ちゃん、美咲さんの話を聞いて、何も感じないの?」と問いかけてしまった。

九条蓮は目を伏せ、その奥に一瞬だけ優しさを浮かべた。そして静かに「うん、分かってる」と答えた。

九条蓮は九条凛を見て言った。「もうこのことは心配しなくていい。美咲さんがサインしないなら、それでいい。俺の方で多少面倒はあるかもしれないが、問題ない。神谷海斗がしっかりお前を守ってくれる。これからはお前も神谷家の一員だ。九条家がどうなろうと、あまり気にしなくていい。」

「お兄ちゃん!」九条凛は今にも泣き出しそうだった。

九条蓮はすべてを自分一人で背負い、周りの大切な人たちだけはきちんと守ろうとしているように思えてならなかった。でも、彼自身はどうなるのだろう。

そう思うと、九条凛は九条蓮のことが切なくなり、目が赤くなっていった。

「お兄ちゃん、私はまだ結婚してないから神谷家の人間じゃないよ。今はまだ九条家の長女なんだから、追い出さないで。一緒に進退を共にしたいの。」

九条蓮は口元に微笑みを浮かべた。「もう、駄々をこねるな。さっき神谷海斗に電話したから、もうすぐ来る。支度しておきなさい。」

その時、九条蓮の携帯が鳴った。彼は画面をスワイプして応答した。「はい。」

「九条さん、ご依頼いただいた海外の専門医療チームが到着しました。今、会長の症例を診ています……」

「分かった。すぐ行く。」