Chapter 807
高橋美咲の新作発表会(続き)
記者たちに、高橋彩花と西園寺陸が親しげにしている様子をしっかり撮らせようとしていた。
記者たちはカメラを構え、高橋彩花に向けてシャッターを切った。
一瞬、高橋彩花はみんなの注目の的となった。
周囲から向けられる視線を感じて、高橋彩花の口元がさらにわずかに上がった。
周りのゲストたちも高橋彩花側の様子を見て、ざわざわと話し始めた。
「あれ、東都キャピタルの西園寺さんじゃない?」
「そうみたい。さっき高橋グループのスタッフが、西園寺さんが今回の新商品発表会に大きな投資をしたって言ってたよ。」
「でも…向かいにも高橋グループの発表会があるよね。西園寺さんはどっちに投資したんだろう?」
「そんなの決まってるじゃん!高橋彩花さんの方だよ。あっちは無名の新人だし、西園寺さんがそっちに投資するわけないでしょ?」
周囲のひそひそ話が聞こえてきて、高橋彩花の笑みはさらに深くなった。
まさにこれが狙い通りの効果だった。
みんなの注目が自分に集まっているのを感じて、高橋彩花はますます熱心に西園寺陸と話し、二人がとても親しいように見せかけた。
「西園寺さん、今日はわざわざお越しいただいたのに、ちゃんとご案内できていませんでした。どうぞ中へ。」
その時、大庭理香が目を光らせ、わざと大きな声で言った。「高橋部長、今回の発表会は西園寺さんが投資してくださったおかげです。もし西園寺さんがいなかったら、こんな盛大な会はできませんでした。お席もきちんとご用意しますね。」
そう言ってから、大庭理香はもう一度西園寺陸に微笑みかけた。「西園寺さん、何かご要望があれば何でもおっしゃってください。」
高橋彩花も満足げに微笑んだ。「そうです、西園寺さん、どうぞご遠慮なく。」
高橋彩花の言葉に、周囲のゲストたちのざわめきがさらに大きくなった。
周りの人たちも、発表会が終わったらすぐに注文しようかと心が動き始めたその時、西園寺陸が突然冷たい声で言った。「私はあなたたちに投資などしていません。」
西園寺陸の言葉が落ちた瞬間、周囲の空気が一気に重くなった。
高橋彩花の写真を撮り続けていた記者たちも、呆然として動けなくなった。
しばらくしてから、大庭理香がようやく小声で「高橋部長、これは……」とつぶやいた。
西園寺陸は自分たちの招待を受けて来たはずなのに、なぜこんなことを言うのか?しかも、明らかに投資しているはずなのに。
高橋彩花も徐々に状況を理解し始めた。自分は長谷川傑と知り合いで、長谷川傑が投資を約束してくれたのだから、西園寺陸はこの件を知らないのだろうと思った。
彼女は微笑みながら「西園寺さん、あなたのマネージャーの長谷川傑さんとは友人です。私たちは投資契約を結びました。もしかしたら長谷川傑さんがあなたに伝えていなかったのかもしれません。誤解を招いてしまい、本当に申し訳ありません」とやんわり伝えた。
高橋彩花自身もそうやって自分を納得させていた。後で長谷川傑に文句を言いに行こうとすら思っていた。自分のことを西園寺陸に伝えていなかったせいで、記者たちの前で恥をかくところだったのだから。
高橋彩花が説明を加えると、周囲の気まずい空気も徐々に和らいでいった。
この発言で、高橋彩花は記者たちに西園寺陸が投資を否定した理由を思い出させたかったのだ。
案の定、近くの記者たちは彼女の言葉を聞いて、すぐに納得したような表情を浮かべた。
「なるほど、マネージャーが承認した投資だったのか。だから西園寺さんは高橋彩花に投資したことがないと言ったんだな」
「やっぱり何か誤解があったんだね」
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