Chapter 804
その裏にある陰謀
その様子を見て、九条悠真は自分の読みが正しかったと確信した。
彼は静かに、「大旦那様の性格は知ってるだろう。一度決めたことは簡単に変えない。もし九条蓮を追い出したら、あいつはこのままずっと戻れないかもしれない…」と語りかけた。
九条芽衣はそれを聞いて、さらに深刻な表情になった。
九条悠真の目が一瞬光り、すかさず「今、九条蓮を助けられるのは君だけだ」と言った。
「ふん。」九条芽衣は冷たく笑い、九条悠真を見て「あなたが善意で助けるはずないでしょ。あいつが追い出されたなら、むしろあなたがその座を狙えるんじゃないの?」と返した。
九条悠真は、九条芽衣がここまで鋭いとは思っていなかった。
だが、こういう冷静な人間ほど、案外罠に落ちやすいものだ。
結局、賢い者ほど自分の賢さに足をすくわれる。
彼は小さくため息をつき、「俺の九条家での立場なんて、もともと何も回ってこない。自分に得になることしかできないさ」と言った。
「前に東京まで行って九条蓮から学んだこともあるし、あいつが九条ホールディングスに戻れれば、俺も将来いろいろ得られるからな。」
九条芽衣は目を伏せ、九条悠真の続きを静かに待った。
しばらくしてから、彼女は「どうするつもり?」と尋ねた。
その言葉を聞いた九条悠真は、薄く微笑んだ。九条芽衣がそう聞いた時点で、もう心が揺れている証拠だった。
九条悠真は言った。「九条家の大旦那様は今も九条ホールディングスをしっかり掌握している。もし万が一、あの方に何かあれば、九条蓮を呼び戻すことだってできる!」
九条芽衣の目には、彼には何の力もないように映った。
もし九条家の大旦那様に何かあれば、戻ってくるのは九条蓮だ——だが、彼女にはその裏で何をしているのか分からず、いざという時に権力を握るのは彼だと気づいていなかった。
九条芽衣は嘲るように笑った。「よく言うわね。私を使ってお祖父様に手を出させようとして、自分は何もしないつもり?」
「あの方はあなたと血の繋がりはない。あなたの中に流れているのは九条家の血じゃない。」
九条悠真の言葉に、九条芽衣の表情が一瞬変わりかけた。
彼女は本当に九条家の人間ではない。だから他の九条家の人たちに対して家族の情はなく、むしろ自分をいじめてきた九条家の面々には恨みすらあった。ただ一人、九条蓮を除いて。
だが今、九条蓮は高橋美咲のせいで九条家から追い出されてしまった。
そう思うと、九条芽衣の心には強い悔しさがこみ上げてきた。
その表情を読み取った九条悠真は、さらに彼女を焚きつけた。「大旦那様がもう何もできなくなって、九条蓮が九条ホールディングスのトップになれば、あなたも堂々と彼の隣に立てる。それが一番望んでいることじゃないのか?」
「どれくらい確実なの?」九条芽衣は心が揺れた。
九条悠真はポケットから小さな透明な瓶を取り出し、九条芽衣の前に差し出した。低い声で「高値で手に入れたものだ。これを飲ませれば、しばらく昏睡状態になるが命に別状はない。大旦那様にこれを渡せば、俺たちの目的は達成できる」と言った。
九条芽衣はその小瓶を手に取り、じっくりと観察した。
「本当にそんなに効くの?」
「もちろんさ!」九条悠真ははぐらかすように言った。「俺も九条家の人間だし、大旦那様は俺にとっても目上の方だ。危害を加えるつもりはない。ただ少し眠ってもらうだけだよ。」
九条悠真の言葉を聞いて、九条芽衣はすっかり安心した。
彼女はとても頭が切れるが、これほど大きな誘惑を前にしては、どうしても心が動いてしまう。
九条蓮のためなら、彼女はどんなことでもする覚悟だった。たとえ大旦那様に毒を盛ることでも!
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