Chapter 792
本当に安っぽい
西園寺莉央が九条凛のことをとても気にしていると知っていた森岡千隼は、きちんと機嫌を取らなければ、この件は簡単には収まらないだろうと考えていた。
やっとの思いで西園寺莉央に取り入った森岡千隼は、二人がここまでこぎつけて結婚まで進んだことに、かなりの努力を注いできた。
莉央が言うには、結婚したら西園寺グループに入れて、すぐに管理職にしてくれるという話だった。そのことを思い出すだけで、森岡千隼は内心ほくそ笑んでいた。
以前、九条凛が「九条ホールディングスで働けるように手配する」と言ったときは、彼女に本当に力があるのだと思い、自分を引き上げてくれると期待していた。
まさか実際に九条ホールディングスに入ってみたら、ただの一般社員だったとは!
その後、自分の努力でなんとか今の部署の主任にまで昇進した。
それなのに九条凛は、まるで自分に大きな恩を施したかのような顔をして、感謝されるのを当然だと思っていた。本当に滑稽だった。
だが今は西園寺莉央と出会えたおかげで、将来西園寺グループに行けるなら、もう九条ホールディングスで窮屈な思いをする必要もない。だからこそ、今は西園寺莉央のご機嫌を取り、できるだけ早く九条ホールディングスから抜け出すことが目標だった。
森岡千隼のご機嫌取りの言葉を聞いて、西園寺莉央の機嫌はようやく少し和らいだ。
彼女は九条凛を見下すように見て、「少しは分かってるじゃない」と言い放った。
そう言うと、西園寺莉央は急に冷たい笑みを浮かべて言った。「昔、九条凛があなたを九条ホールディングスに入れてくれたって言ってたけど、結局ただの一般社員だったなんて、本当に安っぽいわね。自分の名字が九条だからって、本当に九条家と関係があるとでも思ってるのかしら?」
「私は違うわ。あなたが西園寺グループに入ったら、お父様に頼んで管理職にしてもらう。九条ホールディングスでの仕事より、ずっといいでしょ?」
西園寺莉央の言葉を聞いた森岡千隼の目は一気に輝いた。
これまでは莉央の父親からはっきりとした約束はなく、結婚後に話をしようと言われていただけだった。だが今の莉央の口ぶりでは、すでに全て決まっているようで、もう心配する必要はなさそうだった。
九条ホールディングスは見た目は華やかで、西園寺グループよりもはるかに格上だが、そこでずっと抑えつけられてきた自分には、活躍の場などなかった。
いっそすぐに西園寺グループに移った方がいい。義父の後ろ盾があれば、今のように九条ホールディングスで苦労するより、ずっと上手くやれるはずだ。
西園寺莉央の言葉を聞いた九条凛は、ただただ可笑しくて仕方がなかった。
当時は自分の正体を明かさずに、森岡千隼が九条ホールディングスで働けるように手配した。
本当は最初から管理職に就かせるつもりだったが、兄が「まずは森岡千隼を試してみよう」と言い、試験に合格したら昇進させることにしていた。
まさか森岡千隼が、あんな簡単な試験すら耐えられないとは思わなかった。今やそれが、彼らの勝ち誇った嘲笑のネタになっている。
しかも森岡千隼は、自分が九条ホールディングスで短期間のうちに何度も昇進したことを、すべて自分の実力だと思い込んでいる。
もし自分が裏で手を回していなければ、優秀な人材がひしめく九条ホールディングスで、森岡千隼など何の価値もなかったはずだ。
さっきまで西園寺莉央と九条凛が話している間、結城絵麻はずっと脇で聞いていた。西園寺莉央が九条凛を嘲笑するのを耳にして、驚きを隠せなかった。
西園寺莉央は「九条凛は自分の名字が九条だからって、本当に九条家の一員だと思ってるの?」と言った。
もしかして……この二人は九条凛が九条家の娘だと知らないのだろうか?
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