Chapter 787
チャンスをくれませんか
…
オフィス内。
高橋美咲が自分のオフィスに戻ると、ようやく少しだけ肩の力が抜けた。
デスクに腰を下ろし、眉をひそめる。高橋彩花に投資を奪われたのは本当に頭が痛い。発表会まであと1週間しかないのに、今さらどこで投資を探せばいいのか。
そんなふうに悩んでいると、突然スマホが鳴った。
見知らぬ番号だった。
誰からだろうと首をかしげつつ、少し迷った末に通話ボタンをスワイプした。「もしもし、どちら様ですか?」
「高橋さん、こんにちは。東都キャピタルの西園寺陸と申します…」
東都キャピタルの名を聞いた瞬間、高橋美咲の表情は一気に曇った。
以前、あの会社は自分と森川茉莉を呼び出しておきながら、高橋彩花が現れるとそちらに投資してしまった。今や東都キャピタルにはかなり敏感になっている。まさかまた連絡してくるとは…一体何の用?
高橋美咲の声は少し冷たくなり、淡々と「ご用件は?」と返した。
「実はですね…うちの社員が勝手な判断で間違った相手に投資してしまいまして、もうその者は解雇しました。改めてあなたに投資したいのですが、チャンスをいただけませんか?」
西園寺陸の言葉を聞いた高橋美咲は、完全に呆気に取られてしまった。
どういうこと?西園寺陸が自分に投資したいって?
東都キャピタルはすでに高橋彩花に投資したはずなのに、なぜ急に心変わりしたの?
ふと、高橋美咲は、あの日東都キャピタルの担当者は会社のトップではなく、ただの社員だったことを思い出した。本当に会社として方針転換したのかもしれない。
前回の件があっただけに、高橋美咲はすっかり慎重になっていた。無駄足は踏みたくない。だから不安げに「本当に私に投資するんですか?また会ったときに気が変わって他の人に変えるなんてこと、ありませんよね?それならもう会う必要もないと思います」と言った。
「絶対にありません!」西園寺陸はその言葉を聞くや否や、慌てて「高橋さん、前回のことは誤解でした。ご安心ください。今回は私が直接お迎えします。ご希望の投資額も全てご用意しますので、必ずご満足いただけます!」とまくし立てた。
通話を終えても、高橋美咲はまだ呆然としたままだった。
どうしてこんな現実味のない展開になるの?西園寺陸が自分にこんなに丁寧に接するなんて!
高橋美咲は西園寺陸とレストランで会う約束をした。
もし何か予想外のことが起きても相談できるようにと、森川茉莉も連れてきていた。
西園寺陸は個室のボックス席に、きちんとしたスーツ姿で座っていた。どうやら事前に高橋美咲の写真を見ていたようで、彼女を見つけると手を振った。
高橋美咲と森川茉莉は西園寺陸の向かいに座った。「西園寺さん、こんにちは。高橋美咲です。」
西園寺陸は静かに高橋美咲を観察した。
写真で見たときも、なかなか綺麗な子だと思っていた。
だが、実際に会ってみると、さらに魅力的だった。生き生きとした表情や動きが、写真以上の鮮やかさを感じさせる。これなら九条蓮のような氷の男が惹かれるのも無理はない。
そんなことを心の中で思いながらも、西園寺陸は表情に出さず、微笑んで言った。「高橋さん、先日の件は本当に申し訳ありませんでした。私が会社にいなかったせいで、社員の管理が行き届きませんでした。どうかご気分を害されていなければいいのですが。お詫びとして、投資額を増やすことにしました。こちらが契約書です。ご確認ください。」
そう言って、西園寺陸は手元の書類を高橋美咲の前に差し出した。
高橋美咲は少し警戒しながらそれを受け取り、開いて読み始めた。契約内容をはっきりと確認した瞬間、完全に呆然とした。
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