Chapter 780
高橋彩花、リソースを断つ(続き)
高橋彩花はわざと大庭理香を制して、柔らかく言った。「もうやめて。妹をからかわないで。きっと前はプライドが邪魔して私のリソースを受け入れられなかっただけで、今はもう受け入れるしかないんじゃない?」
二人が勝ち誇った様子で盛り上がるのを見て、森川茉莉は高橋美咲のために言い返したくてたまらなかったが、高橋美咲が彼女を制した。「行きましょう。犬に噛まれても、噛み返す必要はないわ。」
そう言って、高橋美咲は立ち上がり、森川茉莉を連れてその場を離れた。
高橋美咲が去った後、高橋彩花はようやく何かを思い出した。
高橋美咲のあの言葉、どういう意味?自分が犬だと言いたいの?
そのとき、張杰ソンが高橋彩花のもとに歩み寄り、「彩花さん、ご依頼の件はもう片付けました。明日、お時間ありますか?キャンドルライトディナーでもいかがですか?」と声をかけた。
本当はあまり乗り気ではなかったが、張杰ソンは今回、大きな貸しを作ってくれた。
高橋彩花はしぶしぶ「わかったわ。明日、食事に付き合う」と答えた。
高橋美咲は森川茉莉と一緒に会社を出た。
森川茉莉はすっかり元気をなくし、ひどく落ち込んでいた。
せっかく誰かがメゾン・ヴェルヌに興味を持ってくれて、きっと投資してくれると思っていたのに、高橋彩花に一瞬で台無しにされるなんて思いもしなかった。
高橋彩花は本当にひどすぎる!
高橋美咲は森川茉莉をちらりと見て、あまりにも落ち込んでいる様子に、ふっと微笑んで慰めた。「茉莉、そんなに落ち込まないで。ここがダメでも、また別の良い投資家を探せばいいじゃない。」
「高橋マネージャー!この間ずっと誰からも連絡がなかったんです。東都キャピタルが初めて声をかけてくれたんですよ。きっと高橋彩花が裏で何か仕組んだんだと思います!」と森川茉莉は憤慨して言った。
高橋美咲は小さくため息をついた。それは彼女も分かっていたことだった。
今できることは、気を強く持って、何とかして新作発表会を成功させることだけ。そうすれば高橋彩花の勢いを止められる。
今日はこの件で一日が潰れてしまった。東都キャピタルへの訪問や待ち時間もあり、もうすぐ終業時間だったので、高橋美咲は森川茉莉に早めに帰るように言った。
もう少し慰めの言葉を交わして、二人は別れてそれぞれ帰路についた。
高橋美咲は森川茉莉を慰めたものの、自分自身も気分が晴れず、落ち込んだままマンションに戻った。
エレベーターに足を踏み入れた瞬間、大きな手がドアを押さえ、九条蓮の長身が現れた。オーダーメイドのスーツ姿で、ちょうどオフィスから戻ったばかりのようだった。
九条蓮の姿を見た瞬間、高橋美咲は九条凛の言葉を思い出した。
九条蓮は本当に家を追い出されて、役職まで剥奪されるかもしれない、と言っていた——
高橋美咲の目に不安が浮かんだが、今の自分と九条蓮の関係は少し気まずく、そんなことを詮索するのはふさわしくないと感じた。
九条蓮は高橋美咲を一瞥したが、何も言わず、静かに隣に立った。
エレベーターのドアがゆっくり閉まる。
二人きりのエレベーター内は、どこか気まずい空気が流れる。高橋美咲は九条蓮から漂う、あの懐かしい爽やかな香りを感じ取り、過去の記憶が一気に蘇った。
胸の高鳴りを抑え、そっと二歩ほど横にずれた。
九条蓮は目線を落として高橋美咲を見た。彼女が距離を取ろうとする様子に、少し眉をひそめて一歩近づいた。
高橋美咲は九条蓮との距離が広がらないことに気づき、さらに二歩ほど離れた。
だが九条蓮もすぐにまた近づいてくる。
また離れる!
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