Chapter 78
婚約カウントダウン
それに、今は高橋美咲を会長の前に出せないとも言われていた。まずは九条悠真の件を片付ける必要があるから、九条凛もまだ九条蓮の状況を高橋美咲に話せなかった。
九条凛はすぐに話題を変え、「あ、心配しないで。ちゃんと契約も交わしてるでしょ?彼は誠実な人だから、絶対に戻ってくるよ」と安心させた。
九条凛は高橋美咲をデザイナーのスタジオへ連れて行った。
このスタジオは「吉田美玲スタイリング」といい、国際的にも有名なスタイリングスタジオで、デザイナーが手がけるドレスはどれも一点物だった。
スタッフが二人を温かく迎えた。
デザイナーがいくつかの精巧で美しいオートクチュールドレスを持ってきて、笑顔で紹介した。「九条お嬢様、高橋さん、こちらは今シーズン特別にデザインしたドレスです。気に入ったものがあればぜひご覧ください。」
高橋美咲は数年間貧しい生活をしていたが、幼い頃から培った審美眼とセンスは健在だった。一目で、このドレスにあしらわれたクラッシュダイヤが高価なものであることや、独特なデザインが着た時の華やかさを想像させることが分かった。
九条凛は床まで届く湖水色のドレスに目を留め、そのまま高橋美咲の手に押し込んだ。「これ、試着してみて!」
高橋美咲は仕方なくドレスを持って試着室へ向かった。
着替えて出てくると、九条凛は思わず口を開き、「わあ!」と感嘆の声を上げた。目には驚きが溢れていた。
高橋美咲が着ているドレスは、彼女にぴったりだった。
まさに、現れた瞬間に誰もが目を奪われるような美しさだった。
実は高橋美咲は大学時代、学内一の美人だったが、いつも地味な服装で着飾ることもなかった。その完璧なスタイルも普段は普通の服に隠れていた。だが、少し手を加えるだけで、その美しさが一気に引き立った。
このドレスはボディラインを強調するデザインで、スリットは太ももの付け根まで入っており、高橋美咲の脚を長く真っ直ぐに見せていた。背中も大きく開いていて、肩甲骨の美しさが際立ち、ライトの下で肌は透き通るように白く輝いていた。
こんなドレスを着ても、高橋美咲は堅苦しさや居心地の悪さを感じさせず、むしろ堂々とした気品と落ち着きを漂わせていた。もともとこうした場でドレスを着ることにも慣れていたので、すぐに順応できたのだ。
「美咲、早くメイクさんにメイクしてもらって!」
九条凛は高橋美咲を椅子に座らせ、プロのメイクアップアーティストが道具を持ってメイクを始めた。
その間、九条凛はスマホを取り出し、九条蓮に状況を報告した。
こっそり高橋美咲の写真も撮って送った。
「お兄ちゃん、お義姉さんめっちゃ綺麗だよ!」
その頃、大阪にいる九条蓮は九条凛からのメッセージを受け取った。
彼の深い瞳がスマホに落ちる。写真の中、高橋美咲は鏡の前に座り、フルメイクで繊細な顔立ちが際立ち、息を呑むほど美しかった。
やがて九条蓮の視線は彼女の着ているドレスに落ち着いた。柔らかな髪がまっすぐな背中に流れ、雪のように白い肌がほのかに透けて、どこか秘めやかな色気を漂わせていた。
座っているせいで、ガウンの裾からすらりと伸びた脚があらわになっていた。その形の美しさと長さは、男なら誰もが目を奪われてしまうほどだった。
九条蓮の眉がわずかにひそめられる。
「蓮、どうしたの?企画書に何か問題でも?」
九条会長はソファに背筋を伸ばして座り、厳しい表情と自然な威厳を漂わせていた。その真剣な視線が九条蓮に向けられる。
「いいえ。」九条蓮はスマートフォンをしまい、立ち上がった。「ちょっと電話してきます。」
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