Chapter 777
少しだけ、あなたのそばにいたくて(続き)
高橋美咲はまだ自分に気持ちがある。むしろ自分に会うのを少し怖がっているくらいだ。だからこそ、あの日九条凛が言っていた通り、高橋美咲は自分を巻き込みたくなくて自ら身を引き、黒川善を口実にしただけだったのだ。本当に可笑しい話だ。
高橋グループに着いても、高橋美咲は落ち着かず、九条蓮が向かいに引っ越してきたことばかり考えていた。
結局、我慢できずに携帯を取り出し、九条凛に電話をかけた。
すぐに電話がつながり、九条凛の声が聞こえた。「美咲さん、どうしたの?何かあった?」
「凛ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるの。」高橋美咲は困ったように尋ねた。「お兄さん、本当に九条家から追い出されたの?今、私のマンションの向かいに引っ越してきてるの!」
九条凛は昨日ちょうど九条蓮と話したばかりなので、彼の状況はもちろん知っている。高橋美咲から電話が来たからには、全力でサポートしなければならない。
九条凛はため息をつき、「はあ…全部あなたたち二人のせいだよ。お兄ちゃん、頑固でお祖父様の言うことを聞かなかったから、追い出されちゃったの!しかも名義の資産も全部没収されて、カードも凍結されて…聞いた話だと役職まで外されるかも…」と話した。
高橋美咲に嘘をつくのは少し心苦しかったが、二人の幸せのためなら平気で嘘もつける。
高橋美咲は話を聞くほど表情が曇っていった。九条蓮がここに引っ越してきたのはそこまで大変なことではないと思っていたが、今聞く限り、想像以上に深刻な状況のようだった。
もともと九条蓮と別れたのは、彼と九条家の間に問題が起きてほしくなかったからなのに、結局一番望まない方向に進んでしまった。
ちょうどその時、森川茉莉が入ってきて「高橋マネージャー、そろそろ投資家との約束の時間です」と声をかけた。
「凛ちゃん、ごめんね。仕事があるから、また時間がある時に話そうね。」
そう言って、高橋美咲は電話を切った。
彼女は静かにため息をついた。まずは目の前のことに集中しよう。九条蓮のことは、帰ってから慎重に本人に聞いてみるつもりだった。
その頃、高橋彩花のオフィスでは——。
秘書の大庭理香が脇に立ち、「高橋美咲が新しい投資家を見つけたそうです。今日、その投資家と会うみたいですよ!」と報告した。
「何ですって?全部手はず通りに進んでいたはずじゃないの?高橋美咲にまだ投資する人がいるなんて!」高橋彩花は一気に表情を曇らせ、大庭理香を鋭く見上げた。
「本当です!森川茉莉が他の人たちとその話をしているのを聞きました。今日、投資家と会うそうです。」
高橋彩花は目を細め、「急いで調べて。高橋美咲がどの投資家と会うのか突き止めて」と命じた。
大庭理香はすぐに「分かりました」と返事し、足早に部屋を出ていった。
しばらくして、大庭理香が外から戻ってきた。入るなり、「高橋マネージャー、分かりました!」と声を上げた。
「どうだった?どこの投資会社?」
大庭理香は「高橋美咲が会う投資会社は東都キャピタルです。まさかこの会社だったとは!」と答えた。
「東都キャピタルですって?」高橋彩花はもう座っていられなかった。東都キャピタルは小さな会社ではない。
まさか高橋美咲がこんな幸運を引き寄せて、東都キャピタルに目をかけられるなんて。こんなことで高橋美咲にいい思いをさせるわけにはいかない。もし本当に投資を受けて新商品の発表会を成功させたら、少しずつ自分を追い越していくかもしれない。
ダメだ!黙って見ているわけにはいかない!
高橋彩花は机を叩いて立ち上がり、「今すぐ準備して。私たちも東都キャピタルに行くわよ」と言い放った。
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