Chapter 768
「一緒にいるのが疲れる」と言われて
九条家の大奥様はため息をつきながら言った。「はあ……今日、蓮が帰ってきてから様子がどうもおかしいのよ。部屋にこもったまま、一言も口をきかないし、夕食のときも全然反応しなかったの。何かあったんじゃないかと心配で、あなたに様子を見てもらおうと思って……」
「もし本当にあの女のせいなら、どうか蓮を説得してちょうだい。絶対に馬鹿なことだけはさせないで!」
九条会長と九条家の大奥様の言葉を聞いて、九条凛の表情は何度も変わった。
えっ!?
兄の状況、そんなに深刻だったの?
あの日は心配しなくていいって言ってたのに、こんなことになってるなんて……やっぱり、私が見張ってないとダメなんだ。
「蓮、どうしたの? まずドアを開けてくれない? 何があっても一緒に解決できるから。」九条凛はドアを「バンバンバン」と叩いたが、中からは全く反応がなかった。
蓮が部屋にこもってから、誰にも彼の様子は分からなかった。
九条凛の顔は青ざめ、不安げに小声でつぶやいた。「中から何の音もしない……兄さん、まさか変なことしてないよね?」
その言葉を聞いた九条会長と九条家の大奥様も、同時に顔色を失った。
高橋美咲が九条蓮にこれほどまでの影響を与えるとは、二人とも思ってもみなかった。本当に何かあったら、とても耐えられない。
九条凛は自分の言葉で二人の表情が変わったのを見て、慌てて「お祖父様、お祖母様、今のはただの冗談だから。兄さんはそんなに衝動的な人じゃないし……ドアを壊して開けてみましょうか?」と安心させようとした。
「早く誰か呼んで、すぐにドアを壊しなさい!」と九条会長がすぐに命じた。
そのとき、九条家の大奥様が何かを思い出したように「大丈夫よ。部屋の合鍵があるから、すぐに持ってこさせるわ」と言った。
慌ただしい中、使用人がすぐに鍵を持ってきた。
カチャリ。小さな音とともに、部屋のドアが開いた。
中の様子は想像していたほど悪くはなかった。九条蓮は何もしておらず、ただバルコニーの椅子に静かに座り、寂しそうにうなだれていた。
無事な兄の姿を見て、九条凛はほっと息をついた。
彼女は目で九条会長と九条家の大奥様に合図し、二人に先に部屋を出るよう促した。
二人は心配しつつも、蓮を刺激するのを恐れて九条凛に任せ、静かに部屋を出ていった。
廊下に出ると、九条会長が「どう思う? 蓮は本当にあの女と別れたのか?」と尋ねた。
そうでなければ、あんな様子にはならない。嘘には見えない。
今度ばかりは、さすがに嘘じゃないだろう。
九条家の大奥様は深刻な顔で「あなたも高橋美咲のこと、そこまで嫌ってるわけじゃないでしょう? なのに、なぜそんなに意地を張るの? 最初から二人を認めていれば、こんなことにはならなかったのに」と言った。
九条会長はすぐに渋い顔になった。
「様子を見よう。もし本当にあの子があの女と別れたのなら、今さら私が認めても意味はないだろう」と鼻を鳴らした。
部屋の中では、九条凛が九条蓮の背中を見つめ、胸が締め付けられる思いだった。
子供の頃から兄はずっと順風満帆で、こんな挫折を味わったことはなかった。こんな兄を見るのは初めてだった。
九条凛は足音を忍ばせて兄のそばに歩み寄り、隣にしゃがみ込んで「蓮、どうしたの? 美咲さんとケンカでもした? 何か困ってるなら話して。どんなことでも私が力になるから」と声をかけた。
九条凛の言葉を聞いた九条蓮は、無表情のまま自嘲気味に口元を歪めた。
九条凛が助けてくれる?
もうどうにもならない問題だった。
九条蓮は深く息を吸い、かすれた声で言った。「いいよ。もう美咲とは何の可能性もない。彼女は俺といるのが疲れるって……もっと楽な相手を選びたいんだって……」
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