Chapter 752
結城家の大切な一人娘
九条凛が九条蓮を連れて帰ってこなかったのでは、と疑い始めていた。もしそうなら、結城家の前で面目を失うことになる。そう思うと、自分で電話しておけばよかったと後悔した。
その時、九条家本邸の門を一台の車がゆっくりと通り、中庭に停まった。
それは九条蓮がよく使う車だった。九条蓮が帰ってきたのだ!
九条家の大旦那様は九条蓮の帰宅を見て、険しかった表情がようやく少し和らいだ。
しばらくして、九条蓮と九条凛が姿を現した。九条蓮は仕立ての良いスーツに身を包み、背が高く凛々しく、際立って端正な顔立ちをしていた。表情は無く、何を考えているのか読み取れなかった。
九条家の大旦那様は九条凛に手招きし、「凛、結城お嬢様はもういらしている。そばに行ってあげなさい」と声をかけた。
突然呼ばれた九条凛は、呆れたような顔をして、思わず目を回しそうになった。
彼女は結城絵麻と全く親しくないのに!
とはいえ、体裁は大事なので、九条凛は正面からこの女性と向き合うことにした。
九条凛は結城絵麻の隣に座り、丁寧に「こんにちは、結城お嬢様」と挨拶した。
結城絵麻は大阪の社交界で九条凛を見かけたことがなかったので、今日が初対面だった。九条凛が近づくと、結城絵麻はさりげなく彼女を一瞥し、薄く微笑んだ。「こんにちは、九条お嬢様。お噂はかねがね伺っております。」
九条家の大旦那様から突然招待された時、結城絵麻は正直、少し唐突だと感じていた。
そもそも九条家とはほとんど面識がなかった。ただ、結城家の父がこの機会を逃したくないと強く勧めたため、仕方なく来ることになったのだ。
九条家の大旦那様から色々と話を聞き、ようやく自分がここに呼ばれた理由が分かった。
つまり、九条家は九条蓮のために女性を探していたのだ!
結城絵麻は、あの日の九条家の大奥様の誕生日会にも出席していた。高橋美咲や佐伯葉月の一件も目にしており、高橋美咲のことは強く印象に残っていた。
だから今、彼女の心の中には少し疑問が生まれていた。
高橋美咲ほどの地位や実力があれば、九条蓮と十分に釣り合うはずなのに、なぜ九条家は急に九条蓮のために女性を探しているのだろう?
数人が挨拶を交わしながらも、それぞれ胸の内に異なる思いを抱えていた。
九条家の大旦那様は少し離れた場所でその様子を見て、満面の笑みを浮かべていた。ふと九条蓮に目をやり、彼の表情に特に変化がないのを確認して、ようやく少し安心した。
このガキが恥をかかせたり、意地を張って夕食に戻らなかったり、結城お嬢様に対しても態度を崩してしまうのではと、本当に心配していたのだ。もしそんなことになれば、結城家と揉める羽目になる。
ところが予想に反して、蓮はちゃんと戻ってきただけでなく、特に抵抗する様子もなかった。どうやら黙って結城絵麻との見合いを受け入れたようだ。九条凛がうまく説得して、高橋美咲のことは諦めさせたのだろう。
それでいい!九条家の奥様の座は、高橋美咲のような女に務まるはずがない!
一方、九条家の大奥様は目の前の状況を見て、心の中でそっとため息をついた。もしかしたら自分は早まって印象を決めてしまったのかもしれない。今でこそ結城お嬢様も悪くはないが、やはり高橋美咲の方が良いと感じていた。
やがて夕食の準備が整い、皆で席に着いた。
九条家の大旦那様はわざと結城絵麻の席を九条蓮の隣に用意した。不思議なことに、蓮も特に異議を唱えなかったので、大旦那様はますます機嫌が良くなった。
食事の後、九条蓮に結城絵麻を連れて九条家の庭を散歩するよう命じた。
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