Chapter 743
大阪から這い出させてやる
このマンションは高橋彩花の所有だったのか?
高橋美咲は少し驚いた。まさかこんな偶然があるとは思わず、高橋彩花の持ち物に出くわすとは予想外だった。
高橋彩花とは昔から折り合いが悪い。そんな相手に出くわして、良いことが起きるはずもない。
莉莉は高橋彩花の味方で、さっきも高橋彩花に場所を知らせていた。
これは高橋彩花が高橋美咲を辱めるための仕掛けだった。莉莉に高橋美咲をここへ連れて来させ、どこを借りようとしても絶対にうまくいかないようにしていたのだ。
高橋彩花の姿を見つけた莉莉は、すぐに彼女のもとへ歩み寄った。
何も知らないふりをして、丁寧に言った。「あら、大家さん、どうしてこちらに?このお嬢さんがこのお部屋を気に入って、ちょうど借りようとしていたんですよ。」
高橋彩花は唇を歪めて嘲笑し、傲慢な表情で言い放った。「さっきも言ったでしょ?高橋美咲にはこの部屋を絶対に貸さないって!」
「ええと……」莉莉はわざと困ったような顔で高橋美咲を見た。
そしてすぐに高橋美咲のもとへ歩み寄り、「高橋さん、大家さんがやっぱりお部屋を貸すつもりはないそうです。申し訳ありませんが、今回はご縁がなかったようです」と言った。
莉莉は高橋彩花のためにこの件をうまく処理しようと必死だった。たとえ見返りが高橋彩花に一度だけでも富裕層の集まりに連れて行ってもらえることだとしても、それだけで十分だった。
高橋美咲は表情を少し引き締め、「ここがダメなら、莉莉、他の物件を探して」と言った。
莉莉は忠誠心を示すかのように、すぐに態度を変えた。
冷たく言い放つ。「申し訳ありません、高橋さん、もう空いている物件はありません。」
さっきまで莉莉の態度が普通だったせいで、高橋美咲は彼女が高橋彩花と通じているとは思いもしなかった。莉莉の言葉を聞いても、まだ状況を理解できていなかった。
その代わり、高橋彩花が冷たい笑い声を漏らした。
「ふふ、高橋美咲、まだ分からないの?今日はどこを探しても絶対に部屋なんて借りられないわよ。違う、そうじゃない!大阪中どこを探しても無駄。あなたを路頭に迷わせて、大阪から這うようにして出て行かせてやる!」
高橋彩花の言葉を聞いて、莉莉も嘲るような笑みを浮かべた。
その時になって初めて、高橋美咲は莉莉の表情をはっきりと見て取った。
一瞬固まった後、ようやく莉莉と高橋彩花がグルだったことに気づいた。
どうりで高橋彩花がこんなにタイミングよく現れたわけだ。莉莉が知らせていたに違いない。さっき気づかなかった自分が悔やまれるが、今になってようやく理解した。
人の運というのは本当に不思議なものだと高橋美咲は思った。
運が悪い時は、嫌なことが次々と降りかかるものだ。高橋彩花は今日、絶対に自分を許す気がないらしい。
なんてついてない日だろう。
……
その頃、九条凛は九条蓮のオフィスで彼にまとわりついていた。
九条蓮が本当に高橋美咲に未練がないのか、九条凛はどうしても信じられなかった。兄と高橋美咲はあれほど仲が良かったのに、こんな形で別れるなんて、もったいないと感じていた。
あの夜、九条凛は九条蓮を責めて喧嘩別れしたが、兄妹なのだから、そう簡単に疎遠になるはずもない。案の定、九条凛はまた九条蓮を訪ねてきて、図々しくも粘り強く食い下がっていた。
九条凛はしつこく九条蓮にまとわりつき、耳元で何度も繰り返した。「お兄ちゃん、本当に美咲のこと心配じゃないの?昨夜どこに泊まったの?高橋家に戻ったの?誰かにいじめられてない?」
九条蓮は手を止めることなく、顔も上げずに言った。「黒川善が迎えに行った。」
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