Chapter 74
どんなタイプが好きなのか(続き)
「じゃあどんなタイプが好きなんだ!大阪中に一人も気に入る女がいないなんて信じられんぞ!」九条会長は怒鳴り、声に力がこもっていた。
どんなタイプが好きなのか。
九条蓮の脳裏に、ふと細身の女性の姿が浮かんだ。
九条会長は九条蓮が黙り込んだのを聞くと、冷たく鼻を鳴らし、「今すぐ大阪に来い。話がある」と言い放った。
返事も待たずに一方的に電話を切った。
九条蓮は定期的に大阪で研修を受けている。九条会長は本気で九条家の莫大な財産を彼に継がせるつもりで、今の準備もすべてそのためだった。
ただ……祖父のそばにいれば、さらに多くの女性が押しかけてくるだろうが、逃げるわけにもいかない。
九条蓮は鼻梁をつまみ、深く息を吐いた。
本当はマンションに戻るつもりだったが、高橋美咲に色々聞かれてボロが出るのが怖かった。
結局、考えた末に高橋美咲へメッセージを送ることにした。
マンションでは、高橋美咲が待ちくたびれてうとうとし始めていたが、九条蓮はまだ帰ってこない。電話してみようかと思ったが、彼女とのデートを邪魔したくなくて躊躇していた。
つい色々と想像してしまう。もしかして、彼女と食事を終えた後、どこか別の場所に行って帰ってこないのでは……。
カップルなら行く場所はいくらでもあるし……。
なぜか胸の奥がチクリと痛んだ。
まるでまた捨てられたような気分だった。でも自分と九条蓮は何の関係もない、ただ偶然一緒になっただけの他人同士なのに。
その時、テーブルの上のスマホが鳴った。はっとしてすぐに手に取り、ロックを解除する。
九条蓮からのメッセージだった。
「あの人と出張に行くことになった。できるだけ早く戻る」と書かれていた。
高橋美咲の顔に落胆の色が浮かんだ。ずっと九条蓮の帰りを待っていたのに、まさか出張に行ってしまったとは。
テーブルの上の料理を見つめ、そっとため息をついた。
結局、高橋美咲は御膳庵の料理を一人で食べた。],
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九条凛が「御膳庵は東京で一番のレストラン」と言っていたのに、実際に食べてみると、どうしても美味しいとは思えなかった。もしかして、九条蓮のせいで気分が台無しになったのかもしれない。
食事を終えた高橋美咲は、少し片付けをしてからベッドに横になった。
何度も寝返りを打ったが、どうしても眠れなかった。
普段ならすぐに眠れるのに、今夜はどうしてこんなに眠れないのだろう。九条蓮がいなくなってから、心にぽっかり穴が空いたような気がした。
高橋美咲はイライラしながら枕に顔を埋めた。もう考えるのはやめよう!
これからは、九条蓮とは別々の道を歩むだけだ。
……
あっという間に一週間が過ぎた。
その間、九条蓮は一度も戻ってこなかったし、電話すらかけてこなかった。仕事が忙しいときは連絡が取りづらいのは分かっていたが、それでも高橋美咲の心には少し寂しさが残った。
最近は九条凛からもあまり連絡がなかった。どうやら彼氏と何か揉めているらしい。
九条凛は大学時代から彼氏がいた。
四年間同じ大学に通っていたのに、高橋美咲は九条凛が実はお嬢様だったことに全く気づかなかった。本当に隠し方が上手だった。彼女と桜井奈緒はルームメイトで、九条凛は隣の部屋に住んでいた。
二人が知り合ったのは、九条凛が食堂のカードを忘れたとき、高橋美咲が気前よく貸してあげたのがきっかけだった。それ以来、何でも話せる親友になった。
高橋美咲は九条凛のプライベートには干渉したくなかったので、自分から連絡することもなかった。
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