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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 739 - 彼が下した決断

Chapter 739

彼が下した決断

誕生日の本人が一番大事なのに、よくも逆らうものだ。

九条家の大旦那様は本当はまだ言いたいことがあったが、九条家の大奥様のその一言で素直に口をつぐんだ。

高橋美咲は一人で九条家本邸を出て、スーツケースを引きながら歩き出した。

玄関まで来たとき、会いたくない人物と鉢合わせた。九条悠真が高橋美咲の前に立ちはだかり、暗い目で彼女を見つめて「美咲、どこへ行くんだ?送っていこうか」と声をかけた。

「結構です。」

高橋美咲はもうこの元恋人に何の感情もなかったし、これ以上関わるつもりもなかった。

実際、九条凛以外の九条家の人間とは、もう誰とも関わりたくなかった。必要性も感じなかった。

高橋美咲の冷たい態度に、九条悠真の目に一瞬陰りが走った。彼は冷笑しながら言った。「美咲、さっき九条蓮はみんなの前で九条家を選んだんだぞ。まだ分からないのか?九条蓮にとっては九条家の方がずっと大事なんだ。権力が欲しいだけで、もうお前なんかいらないんだよ!」

高橋美咲は九条悠真の言葉を静かに聞いていた。

言葉は少しきつかったが、外から見れば確かにそう映るだろう。さっき九条蓮は何の迷いもなく九条家を選び、自分と別れたのだから。

しばらくしてから、彼女は微笑んだ。

高橋美咲は九条悠真を見上げて言った。「悠真、私たちはもうとっくに終わってる。今さらこんなこと言って何になるの?私を挑発したいの?それとも九条蓮をもっと憎ませたいの?」

高橋美咲は一呼吸置いて続けた。「どちらにしても、あなたと私が元に戻ることは絶対にない。」

そう言い残し、彼女はもう振り返ることなくスーツケースを引いて立ち去った。

九条悠真は高橋美咲の去っていく背中を見つめながら、衝動的に追いかけてどこかに閉じ込めてしまいたい気持ちに駆られた。

もう高橋美咲の心が読めなくなっていた。

ここまで来れば高橋美咲はきっと絶望しているはずだと思っていた。今この瞬間、少しでも優しくすれば、また自分の元に戻ってくるのではないかと。

あるいは、高橋美咲が行くあてもなくなれば、自分の所有する物件のどこかに住まわせて、自然と一緒になれるのではと考えていた。

だが高橋美咲は驚くほど冷静で、自分を見下すような目を向けてきた。

もし自分が九条家の頂点に立ち、すべての権力を手にしたら、そのときこそ高橋美咲は自分を見てくれるのだろうか。

九条家本邸を出た高橋美咲は、ふとした迷いに襲われた。

しばらくの間、どこへ行けばいいのか分からなかった。

九条蓮に「行くところがある」と言って断ったのは、実は嘘だった。

本当はどこにも行くあてなどなかった。高橋家のことを思い出すと…

義母や高橋彩花の顔が浮かび、帰っても笑いものにされるだけだと思うと、またしても居場所がなくなった。

もともと大阪で借りていた部屋も、前回高橋家に戻ったときにすでに解約してしまっていた。

叔父の相沢家に頼ることも考えたが…

今の状況を知られたら、きっとすぐに九条家に乗り込んで自分のために騒ぎ立てるだろう。せっかく穏便に終わったのに、これ以上波風を立てたくなかった。

だから相沢家にも行けない。では、他にどこがあるのか。

高橋美咲は小さくため息をついた。もう東京には自分の居場所がないのかもしれない。

ふと思い浮かんだ人物がいた。もう頼る人がいないと悟り、彼女はその人の番号を押した。「善、そっちに空いてる部屋ある?数日だけ泊めてくれない?部屋が見つかったらすぐ出ていくから。」

電話の相手は黒川善だった。今、頼れるのは彼だけかもしれない。

黒川善は高橋美咲の言葉を聞くと、しばらく沈黙した後、焦ったように言った。「高橋美咲!何があったんだ?九条蓮とケンカでもしたのか?今どこにいる?すぐ迎えに行く!」