Chapter 738
さようなら、九条蓮(続き)
「えっ?どうして行かせちゃったの?さっき美咲さんを引き止めると思ったから、二人きりにしたのに!仲直りすると思ってたのに!」
九条凛は不満そうに九条蓮を睨み、まるで高橋美咲をそのまま行かせたことを責めているようだった。
九条蓮はただ淡々と彼女を一瞥し、唇を固く結んだまま何も言わなかった。
これは自分と高橋美咲が通らなければならない過程だった。すべてに決着をつけるためには、こうするしかなかった。
九条家の大旦那様が高橋美咲の晩餐会出席を許さなかった時から、佐伯葉月が高橋美咲を傷つけようとしたこと、そして九条家のことも——
大旦那様に選択を迫られたその瞬間、初めて自分の無力さを痛感した。
高橋美咲を守ることすらできず、彼女は何度も九条家に苦しめられ、他人に脅かされ、策略に巻き込まれてきた。
だから、決断した。
九条蓮の唇はさらに固く結ばれ、視線は鋭さを増し、目の奥の感情をすべて隠した。
まだ不満げに文句を言っていた九条凛は、彼の様子に気づかず、ぶつぶつと「どうしよう、美咲さん、私に何も言わずに行っちゃった。ちゃんと話したかったのに。どこに行くんだろう、もしかして行く場所もないのかな?」とつぶやいた。
九条蓮は「まだ連絡先は知ってるだろ。電話すればいい」と言った。
「えっ……今なんて言ったの?」九条凛は驚いたように九条蓮を見つめた。
九条蓮が高橋美咲を引き止めなかったどころか、今や彼女の出て行くことにまったく無関心な態度を見せていることに、九条凛は呆れてしまった。
「もう……お兄ちゃん、ひどい!もう話さない!」
九条凛は怒りのこもった視線を九条蓮に投げつけ、ぷいっと部屋を出て行った。
これほどまでに九条蓮に怒りを感じたのは初めてだった。すべては高橋美咲が去ったのに、九条蓮が彼女を引き止めようとしなかったからだ。
九条凛の怒りに満ちた後ろ姿を見送りながら、九条蓮はどうしようもなくため息をついた。
…
「旦那様、若旦那様が今、二階のお部屋に上がられました。」
「何だと!」九条家の大旦那様は使用人の報告を聞くなり、怒りで倒れそうになった。
結局、九条蓮は九条家を選んだものの、この孫の性格はよく分かっている。あの女をそう簡単に忘れられるはずがないのだ。
今また九条蓮が二階に上がって高橋美咲に会いに行ったとなれば、当然、二人の間に再び情が戻るのではと心配になる。
このまましばらくして九条蓮がまた我を忘れて自分に逆らい続けたらどうするのだ。
「まあまあ、もうすぐ別れるんだから、最後に一度会うくらい何が悪いの?」九条家の大奥様はそこまで冷たい人間ではなかった。九条家の大旦那様があまりにも怒り心頭なのを見て、思わずなだめるように言った。「それだけ九条蓮が義理堅くて情のある男だって証拠よ。情も何もない人間にならないと満足できないの?」
九条家の大旦那様はしばらく言葉に詰まり、ようやく一言だけ絞り出した。「義理も情もありすぎるんだよ、あいつは!他の女と組んで人を騙すなんて!」
「九条蓮が言ったじゃない、あれは高橋美咲は知らなかったって。」
九条家の大旦那様は九条家の大奥様を苛立たしげに睨みつけた。「お前はあの女の肩ばかり持つ!」
二人はまた高橋美咲のことで口論になった。
高橋美咲の話になるたび、結局は言い争いになる。九条家の大旦那様は九条家の大奥様が高橋美咲をひいきしていると責め、九条家の大奥様は九条家の大旦那様が冷たすぎると感じていた。
だが今回は、九条家の大奥様が勝った。
九条家の大奥様は九条家の大旦那様に呆れたように目を向け、冷たく鼻を鳴らした。「今日は誰の誕生日だと思ってるの?」
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