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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 736 - 一生越えられない溝

Chapter 736

一生越えられない溝

佐伯葉月は警察の制服を着た人たちが入ってくるのを見て、完全にパニックに陥った。

まだ九条芽衣がいることを思い出した。

自分にやり方を教えたのは彼女なのだから、今さら知らん顔はできない。

だから佐伯葉月は突然、九条芽衣に飛びかかった。一気に九条芽衣の足をつかみ、「芽衣、助けて!私、捕まりたくない、連れて行かれたくないの!」と叫んだ。

九条芽衣は佐伯葉月が突然しがみついてくるとは思っていなかった。

驚いて思わず強く蹴り飛ばした。「離れてよ!あんたなんか知らない!」

佐伯葉月は九条芽衣に裏切られ、知らないふりをされるとは思っていなかった。今まではせいぜい少し恥をかくだけで、時間が経てば皆も忘れて大したことにはならなかっただろう。でも高橋美咲に手を出したことで、事の性質はまったく変わってしまった。

すべてはあの女、九条芽衣が裏で仕組んだことだった。

もし九条芽衣が「高橋美咲はもう妊娠していて、お腹は偽物だ」と言わなければ、こんなこと絶対にしなかったのに!

九条芽衣のせいで自分の人生はめちゃくちゃになった!

佐伯葉月は歯を食いしばり、九条芽衣を鋭く睨みつけた。そして手を挙げて彼女を指差し、「全部あんたのせいよ!全部あんたがやったんでしょ!」と叫んだ。

九条芽衣の顔は一瞬で真っ青になり、佐伯葉月が何か言い出すのではと怯えた。

彼女は後ろの人たちに向かって「何してるの?早く連れて行ってよ!また誰かに危害を加えられたらどうするの!」と叫んだ。

すぐに佐伯葉月は口をふさがれたまま連れて行かれ、佐伯大輔も一緒に連行された。

父娘がどれほど恥知らずなことをしたのか、その詳細は警察署でしっかり取り調べられることになるだろう。

黒幕である九条芽衣は、佐伯葉月と佐伯大輔が連れて行かれるのを見て、ようやく強張っていた体の力が抜けた。

その時になって初めて、自分が全身汗だくになっていることに気づいた。

さっき佐伯葉月にもう少しで自分のことをバラされるところだった。もし九条蓮に知られたら、自分は終わりだ。

自分で手を下さず、佐伯葉月のような頭の弱い女を使ってよかったと、少しだけ安堵した。これなら佐伯葉月が捕まってどんなに取り調べられても、自分には及ばないはず。

九条芽衣はこっそり九条蓮の方を見た。その瞬間、九条蓮が目を上げて彼女と視線が合った。

その目の冷たさに、九条芽衣の心臓が一瞬止まりそうになった。

まるで九条蓮にはすべて見透かされているようで、彼の前ではどこにも隠れる場所がないように感じた。

九条芽衣は不安で拳をぎゅっと握りしめた。

だが結局、九条蓮は何も言わず、ただ立ち上がって階段を上がっていった。

二階では、高橋美咲が荷物をまとめていた。

前回来た時はあまり荷物を持ってきていなかったので、片付けはすぐに終わった。

九条凛は不安そうに彼女を見つめ、沈んだ声で「美咲、…ごめんね。お祖父様があんなに怒ってたから…。お兄ちゃんと別れたりしないでね?」と言った。

九条凛の言葉を聞いて、高橋美咲は苦笑いを浮かべた。

手にしていたものを置き、「凛ちゃん、私が別れたくないって思っても、それだけじゃどうにもならないの。私たちの間には、どうしても越えられない溝があるの…」と答えた。

高橋美咲は言葉を切った。「たぶん、この一生で越えられないかもしれない。」

母も九条家の四男も、もう長いこと意識が戻らないまま。目覚める兆しもなく、このまま一生…そう思うからこそ、「この一生で越えられない」と言ったのだ。

九条家の大旦那様の気持ちを変えるのは、そんなに簡単なことじゃない。

さっき下で、九条蓮が自分ときっぱり距離を置いたことを思い出し、高橋美咲の胸は急に痛んだ。

結局、出会う運命はあっても、一緒になる運命はなかった。自分と九条蓮の関係は、ここまでなのだ。

九条凛はまだ何か言いたそうだったが、その時、九条蓮の姿が二人の前に現れた。

「お兄ちゃん!」

「先に出てて」と九条蓮は淡々と言った。