Chapter 722
佐伯葉月は会場中の笑いものになる
「私の名字は高橋です。父は高橋正人です」
佐伯葉月は雷に打たれたようにその場で固まり、聞き間違いではないかと疑うような顔をした。
今、何と聞こえたのだろう?
高橋美咲は、父親が高橋正人だと言った?そんなはずがあるのか?
初めて高橋美咲の存在を知ったとき、葉月はすでに彼女のことを調べていた。美咲には重い病を患う母親しかおらず、ほかには誰もいないとはっきり把握していた。それなのに、どうして高橋家のお嬢様であるはずがあるのだろう?
その瞬間、周囲にいた令嬢たちも呆然とし、そのうち何人かは次第に事情をのみ込み始めた。
佐伯葉月はわざと高橋美咲を貶めようとしたが、まさか美咲が本当に高橋家のお嬢様だとは思ってもみなかった。その結果、葉月の方が笑いものになってしまったのだ。
「これはさすがに笑えるわ。佐伯葉月は高橋美咲の素性を暴こうとして、かえって藪をつついて蛇を出したってわけ?」
「この前、高橋家の誕生日パーティーに行ったけど、高橋美咲は本当に高橋家のお嬢様よ」
「そうよ。佐伯葉月なんて東京の片田舎から出てきただけの何者でもない女なのに、高橋美咲のことをとやかく言う度胸だけはあるのね。どう見ても高橋美咲にはかなわないでしょう?」
高橋美咲は、自分の言葉が佐伯葉月にどれほどの衝撃を与えるか分かっていた。
以前は母と父の事情があり、東京で一人暮らしをしていたため、誰も彼女の素性を知らなかった。だが今は違う。高橋正人との関係はかなり改善し、高橋グループにも戻って働いていた。
今日こうして口にしたのも、この機会に自分の身元を皆に知ってもらうためだった。
善人ぶった佐伯葉月がこの件を利用したがっているのなら、こちらも堂々と明かしてしまえばいい。
高橋美咲が与えた衝撃を目にした九条凛は、腹を抱えて笑い出しそうになるのを必死にこらえた。
凛は佐伯葉月を見て言った。「佐伯葉月、あんた本当に笑わせてくれるわね。美咲は大阪の高橋家のご令嬢よ。あんたより何倍も格上なのに、どこから美咲を笑う度胸が湧いてくるの?」
佐伯葉月の顔はさらに青ざめ、今にも倒れそうだった。
「高橋美咲が……た、高橋家の人間……」
まともに言葉を発することさえできなかった。先ほどのネックレスによるアレルギー騒ぎだけでも十分に恥をかいたのに、今度は高橋美咲の身元を暴けなかったばかりか、自分が会場中の笑いものになり、さらにいたたまれなくなった。
もう九条家の誕生日パーティーに居続けることなど、到底できそうになかった。
佐伯大輔もすっかり呆然としていた。自分たちが見下していた高橋美咲に、まさかこれほどの身分があるとは、どうしても想像できなかったのだ。
それでは、佐伯葉月が高橋美咲にかなうはずがないではないか。
大輔が再び九条家の大旦那様に目を向けると、その顔は不機嫌そうに曇っていた。それを見れば、葉月にひどく失望していることは明らかだった。おそらく今回の誕生日パーティーで、葉月は気に入られなかったばかりか、かえって嫌われてしまったのだろう。
それなら、佐伯葉月に九条蓮と結婚できる可能性など、まだ残っているのだろうか?
周囲の令嬢たちは不快そうに佐伯葉月を見て、遠慮なく言った。「佐伯さん、いくらなんでも性格が悪すぎません?高橋美咲は明らかに高橋家のお嬢様なのに、何の身分もないなんて言うなんて」
「本当よ。高橋美咲に嫉妬してるんじゃないの?」
「そもそも、高橋美咲は何も悪くないでしょう。失敗して森岡夫人にアレルギー反応を起こさせたのは、明らかにあなたじゃない。高橋美咲は注意してくれただけよ。あなたを助けようとしたのに」
佐伯葉月に扇動される者は一人もおらず、逆に皆が次々と彼女の本性を見抜き、高橋美咲の味方についた。
瞬く間に、佐伯葉月は会場中の笑いものになった!
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