Chapter 720
高橋美咲が会場中を魅了する(続き)
本来、高橋美咲の贈り物は、ただの贈り物にすぎなかった。皆から称賛はされても、今ほどの効果をもたらすことは、決してなかっただろう。
だが、佐伯葉月が起こしたアレルギー騒ぎのせいで、高橋美咲の贈り物は、たちまちひときわ注目を集めるものになった。
先ほど高橋美咲が、佐伯葉月のネックレスに問題があるとすぐに見抜いたことを思い出した者がいた。きっと本人にも相当な実力があるに違いないと、ひそかに人づてに詳しい事情を尋ねた。
すると意外にも、高橋美咲には、そんな知られざる肩書まであることが偶然分かった。
たちまち大勢が、高橋美咲をまったく新しい目で見るようになった。
先ほどまで佐伯葉月にこびへつらっていた令嬢たちは皆、著名なデザイナーQueenの作品を手に入れようと、高橋美咲の周りへ押し寄せた。口々に話しかけながら、彼女の歓心を買おうとした。
つい先ほど、佐伯葉月に加勢して高橋美咲へ何を言ったのかなど、すっかり忘れていた。
九条凛はその光景を見て、あきれてものも言えなかった。この女たちは、本当に面の皮が厚い。顔色一つ変えず、高橋美咲と冗談を言い合い、笑っていられるのだから、感心するほかなかった。
高橋美咲は度量が大きく、誰とも言い争わなかった。自分の品格を保たなければならない。
九条家の面目をつぶすわけにはいかなかった。
そんな高橋美咲を見て、九条家の大奥様は称賛するようにうなずき、目に慈しみの色を浮かべた。
……
その頃、少し離れた場所では、九条蓮が九条会長のそばに立ち、二人もまた高橋美咲の方を見ていた。
九条蓮は片手をポケットに入れたまま、口元にかすかな笑みを浮かべ、低い声で言った。「お祖父様、美咲に満足していただけましたか?」
九条会長は九条蓮の言葉を聞くと、いら立たしげに鼻を鳴らした。
本当は大いに満足していた。だが、高橋美咲に満足していると九条蓮の前で認めろと言われるくらいなら、殺されたほうがましだった。
そこで険しい顔を保ち、何事もなかったふりをした。
だが九条蓮は、お祖父様のことをよく知っており、その胸の内も分かっていた。だから、ただ笑うだけで何も言わなかった。
いつの日か、高橋美咲がお祖父様にも認められる孫の嫁となるかもしれない。
その日は、そう遠くないと彼は信じていた。
佐伯葉月は先ほど面目を失ったばかりなのに、今度は高橋美咲がこれほど輝いたため、先ほどの愚かな失敗が再び掘り返され、これでもかと責め立てられた。
かなりの人が彼女のしたことを何度も話題にし、中には電話で森岡夫人の容体を尋ねる者までいた。
片隅に隠れていても、佐伯葉月は軽蔑に満ちた視線が、ときおり自分をなぞっていくのを感じた。もう、ほとんどその場にいられないほどだった。
佐伯大輔と佐伯葉月は一緒にいる。佐伯葉月がつらい思いをしているのに、佐伯大輔だけが無傷でいられるはずもなかった。
もともとは、佐伯家が九条家とのつながりを得さえすれば、大阪に無事根を下ろせると思っていた。だが、高橋美咲のような女が現れるとは思わなかった。
しかも、佐伯葉月より身分の低い女だ。
どうして受け入れられるだろう?
佐伯葉月も同じことを考えていた。もともとは皆から拒絶されていた高橋美咲が、今では熱心に機嫌を取られる存在になっている。その光景を見て、彼女の目に嫉妬が浮かんだ。
嫉妬が限界に達すると、ついに、ずっとしたいと思っていたことを実行に移した。
佐伯葉月はワイングラスを手に、高橋美咲の前へ人を押し分けて進み出た。
顔に淡い笑みを浮かべ、高橋美咲を囲む令嬢たちに言った。「高橋美咲には家柄も後ろ盾もまったくありません。それでも皆さん、この方とお友達になりたいの? 名家の令嬢であるご自分の格まで落ちるのが怖くないのかしら?」
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