Chapter 710
さすがは義姉(続き)
九条芽衣は小さく笑って言った。「佐伯さん、高橋美咲があなたにかなうはずないでしょ。お祖父様はずっと彼女を嫌っているの。実を言えば、あなたのほうがまだずっと見込みがある。ほら、今だって彼女は九条凛のそばにいるだけで、九条蓮とは一緒にいない。それがお祖父様の不承知の表れよ」
それを聞くと、佐伯葉月の顔に得意げな色が浮かんだ。
高橋美咲の身分は、人前に出せるようなものではない。九条家の二人の長老も、彼女にはひどく不満なのだろう。だから九条凛のあとをついて回ることしかできないのだ。
つまり、九条蓮が彼女の立場を公表することはない。
それなら安心できる!
高橋美咲が九条凛と連れ立って宴会場に現れると、二人はたちまち大勢の注目を集めた。
そのとき、人混みに紛れていた九条悠真も高橋美咲に気づいた。
高橋美咲はただ別のイブニングドレスに着替えただけなのに、息をのむほど美しく、会場中の視線を集めていた。とりわけ九条凛のそばにいることで、さらに多くの憶測を呼んだ。
九条悠真の目が暗く沈んだ。かつては自分の女だった高橋美咲が、今では焦がれても決して手の届かない女になってしまった。
高橋美咲が高橋家の娘だなどと、誰が想像できただろう?
今や彼女と九条蓮は、家柄のうえでも釣り合っている。九条久遠の一件さえなければ、二人はとっくに順調に結ばれていたかもしれない。
九条蓮の視線が高橋美咲に注がれ、高橋美咲も彼を見つめ返していた。二人の目にはぬくもりが満ち、他人には入り込めない無言の通じ合いがあった。
かつて、高橋美咲が自分を好きだった頃もあった。
だが今では、高橋美咲との過去はとうに煙のように消え去り、自分はただの過去の人間にすぎない!
少し前、九条会長は上機嫌で九条蓮を連れて会場を回り、一人ひとりに挨拶をしていた。九条家における九条蓮の地位は、誰の目にも明らかだった。
九条会長の実の息子たちにさえ機会がないのだから、自分たちのような孫の世代など言うまでもない。皆、九条蓮を引き立てるだけの脇役として、端へ追いやられていた。
九条会長が九条蓮をひいきしていることは、誰の目にも明白だった。
だが、それはそれで好都合だ。こうまで露骨にすれば、反発を招くかもしれない。他の者たちが九条蓮に牙をむいたとき、自分は何もせず漁夫の利を得られる。
そのときには、九条家だけでなく、高橋美咲も自分のものになる!
九条悠真の顔に、暗く陰険な冷笑が浮かんだ。
……
高橋美咲の登場は、かなりのざわめきを引き起こした。
以前、高橋家の大旦那様の誕生日宴に出席した客たちは、ひと目で高橋美咲の素性に気づいた。
今日は九条蓮が一人で来ていて、女性を同伴していないものと思っていた。まさか高橋美咲も来ているとは。普通、このような大切な席に高橋美咲まで姿を見せたのなら、それだけで彼女の立場を物語っている。
九条蓮と高橋美咲は並んで立ってはいなかったが、二人がどんな関係なのかは、誰もがすっかり察していた。
「あの方は高橋家のお嬢様よ。前に高橋家の誕生日宴へ行ったとき、あの方が直々に高橋家の大旦那様へお祝いを述べていたもの! 高橋正人さんの娘さんよ」
「そうそう、私もあの日そこにいたわ。あとから九条蓮さんも現れたのに、なぜか何の噂にもならなかったでしょう。さっきから不思議に思っていたのよ」
「それじゃ、高橋家と九条家が縁組をするってこと? 二大名門の結びつきね!」
「そうとは限らないんじゃない? 見てよ、あの女性はずっと姿を見せず、今になってようやく宴会場へ出てきたのよ。隠されていたんじゃないかしら? 九条会長は彼女を気に入っていないって聞いたわ」
「それもありそうね。気づかなかった? 高橋家と九条家には、まるで交流がないみたいよ」
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