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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 705 - 階下へ来る必要はない

Chapter 705

階下へ来る必要はない

蓮は険しい表情で言った。「美咲がいない。捜してきてくれ。さっき電話したが、電源が切れていた」

「分かった、すぐ行ってくる!」凛もたちまち緊張し、すぐに引き受けた。

夜が更けるにつれ、九条家本邸はいっそうにぎやかになった。

正門には高級車が次々に到着した。大勢の人が出入りし、名だたる客たちを運んできた。

大阪での九条家の地位については、言うまでもない。九条家へ目を向ける者は大勢おり、その中で最も注目を集めているのは、おそらく蓮だった。何しろ、蓮は九条会長が最もかわいがる孫であり、将来の九条家を託される可能性が非常に高いと噂されていた。

これまで蓮はずっと東京におり、ひどく目立たないようにしていた。そのため、多くの人が名前は聞いたことがあっても、本人を見たことはなかった。

今日、九条会長夫人の誕生日の宴で、九条会長が蓮を連れて客たちに挨拶して回り、皆は初めて本人をはっきり知った。端正で堂々とした蓮を目にすると、未婚の娘がいる家の者たちは、少なからず思惑を抱き始めた。

九条家と姻戚関係を結べれば、大阪では何をするにも思いどおりになるだろう。

蓮は以前、美咲の祖父の誕生日の宴に一度、姿を現したことがある。だが九条会長はそれを知ると、すぐに人を使って情報を抑え込んだ。

前回の誕生日の宴では、蓮が独身ではないと公表されたものの、今はそばに女性がいない。この世界では、恋人が一人や二人いるのは珍しくもない。本当に家へ嫁ぎ入れる者こそ、手腕があるのだ。

だから皆の目には、蓮は今も最高の独身男性と映っていた。

人々はいっそう熱心になり、絶えず九条会長へ近づき、よい印象を残そうとした。

九条会長は蓮を連れて会場を回り、客に挨拶していたが、実のところ心はすでにここにはなかった。

美咲のスマートフォンは電源が切れており、凛が捜しに行ったばかりだ。今どうなっているのか、まるで分からなかった。

……

葉月と佐伯大輔も宴に来ていた。もともと葉月の頭は蓮のことでいっぱいだったうえ、今日は九条会長夫人の誕生日の宴だ。当然、夫人に取り入るためなら努力を惜しまなかった。

九条会長夫人のそばにつき従い、親しげに褒めそやした。「九条会長夫人、海のように深い幸福に恵まれ、いつまでも若々しくお過ごしになられますよう、お祈り申し上げます」

そう言ったあと、心を込めて用意した贈り物を手渡した。

九条会長夫人は、葉月にそれほど温かくは接しなかった。美咲の母親は息子の事故に関わっていたが、それでも夫人は葉月より美咲のほうを気に入っていた。今では美咲は妊娠もしている。

だが九条会長が美咲にあまり満足していなかったため、九条会長夫人も夫に歩調を合わせるしかなかった。

夫人はうなずき、葉月の贈り物を受け取ると、そばの使用人へ渡して答えた。「わざわざありがとう、佐伯さん」

葉月は今、美咲と蓮がどういう状況なのか知らなかった。先ほど芽衣も、美咲については大して話さなかった。そのため、九条会長夫人たちが今、美咲にどのような態度を取っているのか、葉月にはまるで分からなかった。

そう考えた葉月は九条会長夫人へ身を寄せ、小声で言った。「九条会長夫人、高橋美咲のような家柄の女は、おそらく九条家の嫁にはふさわしくありません。今日のような場に来ても、きっと緊張して、どう振る舞えばよいかも分からないでしょう」

葉月はそう言いながら、自信たっぷりに胸を張り、薄く笑って続けた。「私は幼い頃から、家のためにこうした大きな場をいくつも取り仕切ってきましたから、経験も豊富です……」

葉月はこの機会を使い、九条会長夫人に自分の長所を見てもらいたかった。

美咲のような女が、自分より優れているはずがない。

家柄で比べれば、美咲のような女など圧倒できると、葉月は確信していた。