Chapter 703
高橋美咲は妊娠していなかった(続き)
高橋美咲がすべて自分のせいにして落ち込むのを見て、九条蓮は困ったように笑い、すぐになだめた。「問題があるのは僕のほうかもしれない。それなら、もう少し頑張ればいい」
美咲は蓮を軽く殴った。「わざと言ってるでしょ。私は本当に検査を受けたほうがいいと思ってる。でも、こっそり行かないと。お祖父様とお祖母様に知られたら困るから」
蓮はうなずいた。「うん、なら検査を受けておいで。君に問題がなければ、そのあと僕も受けるよ」
蓮の言葉を聞き、美咲はやはり少し胸を打たれた。
蓮が本当に検査を受ける気になってくれるとは思わなかった。
子供を授かれない夫婦の多くは、夫がすべての責任を妻に押しつけ、何もかも妻の問題にしてしまうと聞いたことがある。蓮が自分を責めず、それどころか自ら検査を受けると言ってくれるとは思っていなかった。
翌日、美咲はわざわざ個人病院を探した。
費用を支払ったあと、一連の検査をすべて受けた。緊張しながら結果を待つあいだ、美咲はあり得る将来を一つ残らず頭の中で思い描いていた。
ようやく、美咲が診察室へ入る番になった。
美咲は落ち着かない様子で診察室に座り、医師を見て尋ねた。「先生、私の体に何か問題がありますか?」
医師は笑顔で言った。「高橋さんのお体は、とても健康です。気持ちを楽にして過ごせば大丈夫ですよ」
医師の言葉を聞き、美咲はほっと息をついた。
よかった。検査の結果、体には何の問題もなかった。
一瞬、美咲は喜ぶべきか、落ち込むべきか分からなくなった。自分に問題がないなら、問題は蓮のほうにあるのだろうか。それとも二人とも何の問題もなく、まだ時期が来ていないだけなのだろうか。
美咲は検査結果を手にしたまま、不安をいっぱいに抱えて病院を出た。
美咲が去ったあと、角の向こうから一人の人影が現れた。九条芽衣だった。
芽衣は今日、親友の検査に付き添うために来ていた。まさか、ここで検査を受ける美咲に出くわすとは思っていなかった。妊婦健診だろうか。だが九条家には系列病院がある。美咲が検査を受けるなら、必ずそちらへ行くはずだ。それなのに、どうしてこんな小さな病院へ来たのだろう。
美咲の妊娠については、あの日から何かおかしいと感じていた。
今、よく考えてみると、もしかして美咲は……。
芽衣の目が急に暗くなった。金と権力で病院の医師を買収し、あっという間に美咲の検査結果を手に入れた。
検査結果を目にした芽衣は、冷たく笑った。
やはり、美咲は妊娠していなかったのだ。
もともと芽衣は、自分が企んでいることだけでは、美咲を九条家から追い出せないかもしれないと恐れていた。だが美咲が妊娠していないと分かった今、事はずっと簡単になった。お祖父様とお祖母様が美咲を受け入れられたのは、彼女の子供がいたからだ。妊娠が嘘だったと知ったら、二人はどうするだろう。
芽衣の唇に、冷たい笑みがゆっくりと浮かんだ。
最もふさわしい時を選び、盛大に暴いてやるつもりだった。
九条家の大奥様の誕生日の宴が、もうすぐ開かれる。そんな大切な場で、美咲の妊娠が嘘だと暴かれたら、どうなるだろう。そのとき美咲は、おそらく二人から恨まれるのではないか。
芽衣は目に軽蔑の色を浮かべ、悠然とその場を去った。
その後の数日間、美咲は九条家の大奥様の誕生日の宴を手伝い、忙しく過ごした。大奥様は手伝ってほしいと言ったものの、実際に任されたのは招待客名簿のような仕事だけだった。体を気遣われ、重い仕事は何一つさせられなかった。
美咲はむしろ気楽に過ごし、あっという間に九条家の大奥様の誕生日の宴を迎えた。
宴の日は朝から、九条家全体が慌ただしく動いていた。
刻一刻と時間が過ぎるにつれ、九条家本邸もにぎやかになり始めた。
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