Chapter 701
あなたは九条蓮が好きなのね(続き)
芽衣は恐怖を乗り越え、泳げるようになった。
皆はずっと芽衣を泳げないと思っていたが、実際にはとうの昔に泳ぎを覚え、水泳もかなり得意だった。
あの日、天から舞い降りた神のように蓮が現れた姿を、芽衣は決して忘れられなかった。今でも思い出すたび、胸が激しく揺さぶられる。
蓮のそばにいる美咲を見ると、嫉妬で気が狂いそうだった。
自分は一生、堂々と蓮の隣に立てないかもしれない。それなのに美咲は、自分のすべてを奪った。だから美咲を始末し、蓮のそばから追い払ってやる。
先ほどは仲を裂こうとして失敗し、それどころか九条家の大旦那様から、今後はあまり来るなとまで言われてしまった。
芽衣は拳をきつく握りしめた。今度こそ、必ず成功させる。
美咲をここへ住まわせるわけにはいかない。もし九条家の大旦那様が、美咲を九条家へ嫁がせることに同意したら、もう二度と機会は巡ってこない。
ほんのわずかな間に、芽衣は美咲を陥れる完璧な計画をすでに思いついていた。
悠真と芽衣が席を外して話していたことには、誰も気づかなかった。
二人は何事もなかったように食卓へ戻った。一瞬だけ無言で視線を交わすと、すぐに目をそらし、何も知らないふりをした。
食事を終えると、家族全員がリビングに座って話をした。
蓮は気遣うように、美咲のためにみかんの皮をむいていた。白い筋まで丁寧にすべて取り除く。受け取った美咲は蓮に微笑んだが、皆の前で何かを言うのは恥ずかしかった。
向こうで、大人の男である蓮がそのように美咲の世話をするのを見た九条家の大旦那様は、薄い唇を固く引き結んだ。
どうやら蓮は、この女に完全に骨抜きにされているらしい。美咲が将来の大切なひ孫を身ごもっていなければ、目を向ける気にさえならなかっただろう。
美咲がおとなしくしている限り、当分のあいだは我慢してやってもよい。
話は子供が生まれてからだ。
九条家の大旦那様も、何しろ高齢だ。ほんの少し経っただけで眠気を覚え、立ち上がって部屋へ戻り、休もうとした。「あとは好きにしなさい。帰るべき者は帰れ。いつまでも皆でここに集まっているな」
それを聞き、皆は次々に立ち上がって帰っていった。
悠真と沙耶香も自宅へ戻った。二人きりになって初めて、沙耶香は不満そうに言った。「高橋美咲が九条家本邸へ住み込むなんて。将来、本当に九条蓮の妻になったら、私たちより上の立場になるんじゃない?」
夫を亡くして以来、沙耶香はずっと悠真を頼ってきた。
九条智久も、つい最近になって九条家の資産の話に関わるようになり、ようやく悠真と母親に少しよくしてやろうと思い出したのだ。
そうでなければ、二人がどれほど惨めな暮らしをしていたか分からない。
沙耶香は心の底から怯えていた。
以前、美咲との間に起きたことが原因で、悠真は蓮に半身不随にされかけた。今では二人は、すでに九条家の端に追いやられた存在だった。九条家の資産をめぐる争いは表でも裏でも激しく、将来誰の手に渡るかは誰にも分からない。悠真の前には、優秀な者がいくらでもいる。どう順番をつけても、悠真の番が来ることはなかった。
そして沙耶香は、以前の出来事のせいで、将来、美咲に苦しめられるのではないかと心配していた。
沙耶香の言葉を聞き、悠真の顔は険しくなった。
悠真は本当に納得できなかった。だから、このまま諦めるつもりはない。今日、すでに芽衣と接触した。味方さえ見つけられれば、事はずっと進めやすくなる。
今できるのは、辛抱強く待つことだけだった。
悠真は拳を握りしめ、母親を安心させるように言った。「母さん、心配しないで。九条蓮に、二度と俺を痛めつける機会は与えない!」
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