Chapter 699
何があっても、君が好きだ
「うん、君たち二人のことは知ってる。過去のことは、もう過去のことだ」
九条蓮は明らかに、九条悠真のことなど気に留めていなかった。実のところ、どうすれば悠真を排除できるか、すでに密かに考え始めていた。
少し間を置き、蓮は優しい目で高橋美咲を見つめた。「僕はそこまで心が狭くない。過去のことにいつまでもこだわったりしないよ。何があっても、僕は君が好きだ」
美咲の頬がたちまち赤く染まった。
今の蓮がこんなにも甘い言葉を口にするのが上手いとは思わなかった。その言葉に、美咲の胸は高鳴った。
あまりにも恥ずかしかった。
その晩は、皆で一緒に夕食を取った。今日は九条家本邸に大勢が集まり、食卓はひときわにぎやかだった。
前回は九条芽衣の一件があったため、美咲は九条家の人々と食事をせず、蓮も彼女と一緒に帰ってしまった。
今夜は、その埋め合わせをしたとも言えた。
唯一残念なのは、隣に芽衣が座り、間にいるのが九条凛だけということだった。
芽衣が腹黒い偽善者だと知った今、美咲はもう彼女に少しの好意も抱いていない。美咲は、何をされても黙っているような人間ではなかった。命を狙ってきた相手に、どうして愛想よく接することなどできるだろう。
芽衣は美咲に見られていることに気づくと、かすかな笑みを浮かべた。
「お義姉様、これまで私たちの間には、いくつも誤解がありました。でも、私たちは家族です。どうか私のことを気にしないでください」
美咲の唇には冷笑が浮かんでいた。芽衣は皆の前で、わざとこんなことを言っている。ここで芽衣に反論すれば、九条のお祖父様は必ず美咲に不満を抱くだろう。
悠真は目を細め、美咲と芽衣を見つめた。その目には、何かを考えるような色が浮かんでいた。
九条沙耶香も何かあると感じ取り、嘲るような表情で、美咲が恥をかくのを待っているようだった。
ほかの者たちも、それぞれに思惑を抱いていた。
少し考えた末、美咲はやはり、この怒りを飲み込む気にはなれなかった。口を開いて言った。「家族なら、互いに陥れたりはしないでしょう。あなたが私に何もしなければ、私も当然、あなたのことを気にしたりしないわ」
芽衣は、美咲が罠にかかるのを待っていたらしい。本当に言い返してくるとは思っていなかった。
芽衣の目に嘲笑がよぎったが、顔には傷ついたような哀れな表情を浮かべて言った。「お義姉様、私は心から仲直りしたいと思っているんです。お義姉様がしたことだって、私はもう気にしていません」
あの日、美咲は怒って立ち去り、蓮も彼女を追いかけた。そのため、あの件は結論が出ないまま終わっていた。
今、芽衣が再び持ち出したのは、明らかに美咲と九条家の間に争いを起こすためだった。
凛は芽衣の言葉を聞き、腹を立てて美咲のために立ち上がろうとした。
しかし凛が口を開くより先に、そばにいた蓮がすでに声を上げていた。
蓮は目を上げて芽衣を見やり、淡々と言った。「食事が終わったら帰れ。これからは大事な用がない限り、ここへ来るな。そうすれば、美咲に何かされる心配もしなくて済むだろう」
芽衣は蓮がそんなことを言うとは思っていなかった。たちまち顔を青ざめさせ、耐えがたい屈辱をあらわにした。
「お兄様の言うとおりよ。芽衣と美咲は気が合わないんだから、これからは来ないほうがいいわ。美咲の妊娠に影響が出ても困るし」
九条家は次の世代をとても重んじていた。そうでなければ、美咲が妊娠していると知ったあと、きちんと自分の世話ができないのではと心配し、九条家本邸へ戻って一緒に暮らさせたりはしなかっただろう。
凛の言葉を聞くと、九条家の大旦那様にわずかに残っていた不満も、すっかり消えた。
大旦那様は低い声で言った。「蓮の言うとおりだ。今後、お前たちはここへ来る回数を減らしなさい」
その場にいた何人かの表情が、わずかに変わった。
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