Chapter 698
どこの女とも知れない人を家に上げるな
認めざるを得ないが、蓮の一手は実に見事だった。九条家が近頃落ち着かず、皆が水面下で競い合っていると知り、あえてこの手を使ったのだろうか。
悠真は大きな衝撃を受け、目を暗くした。
美咲が妊娠しているとは思ってもいなかった。
本来、美咲は自分のものになるはずだった。それを蓮が奪い、美咲のためにあらゆる手を使って悠真を追い詰めたのだ。
悔しさと怒りがこみ上げた。
蓮に及ばないという暗い無力感までが、悠真の心をむしばんでいた。
この憎しみは、必ず思い切り晴らしてやる。
芽衣は、蓮が美咲を九条家に連れ帰って同居させるとは思っていなかった。九条家の大旦那様が美咲をひどく嫌っていることは知っている。
前回の一件で、二人の仲をさらに悪化させることにも成功した。
それでも結局、美咲を始末することはできなかった。
だが今、蓮は美咲を連れ帰り、一日中、大旦那様のそばに置こうとしている。これは、美咲と大旦那様の溝を埋める機会にするつもりなのだろうか。
それは都合が悪い。何か対策を考えなければならないようだ。
芽衣は胸の内で密かに企んでいたが、顔には少しも出さなかった。無邪気で害のない表情を浮かべ、ひどく純真で、少しの攻撃性もないように見せていた。
一方、凛は芽衣がどこかおかしいと感じた。
もともと、いとこの芽衣とはそれほど親しくない。性格が違い、どうしても馬が合わなかった。
凛はむしろ美咲のような人のほうが気が合う。だからこそ、美咲を義姉にしたのだ。
美咲が九条家に戻ってくるのは、本当にいいことなのだろうかと心配せずにはいられなかった。
あいにく凛は近頃、結婚式の準備で忙しく、ここへ戻って一緒に住むこともできない。あとで美咲に、気をつけるよう言い聞かせるしかなさそうだった。
……
蓮が美咲とともに入ってきた。
二人は見た目にもこの上なくお似合いで、肩を並べて歩く姿は目を楽しませた。まるで深く愛し合う、仲睦まじい新婚夫婦のようだった。
芽衣と悠真は二人を目にすると、どちらも表情を険しくした。
蓮も今日これほど大勢の人がいるとは思っておらず、とりわけ悠真の姿には意外そうだった。唇の端にかすかな笑みを浮かべ、穏やかで腹の内を読ませない表情のまま、淡々と言った。「お祖父様、美咲と一緒に来ました」
九条家の大旦那様はそばにいた使用人へ言った。「二人の部屋はもう用意できたか? 蓮の荷物を部屋へ運びなさい」
使用人はうなずき、その場を離れた。
美咲も悠真がいるとは思わず、胸の内でついていないと毒づいた。
悠真との過去を消すことはできない。今、蓮とともにいる以上、美咲にできるのは落ち着いて向き合うことだけだった。
美咲は悠真に対して、何も後ろめたいことはしていない。それどころか、先に彼女を裏切ったのは悠真のほうだ。
蓮は美咲の落ち着かない様子に気づいたらしく、手を伸ばして彼女の手を取った。そして低い声で言った。「行こう。部屋が気に入るか、一緒に見に行こう」
そう言うと、蓮は美咲を連れてその場を離れた。
美咲と蓮は部屋に入った。
九条家本邸は広く、蓮と美咲に用意された部屋もとても大きかった。内装は格別に洗練され、文句のつけどころなどない。美咲にも不満はまったくなかったし、蓮が先ほど自分を連れ出すため、わざとあんな口実を使ったのだとも分かっていた。
先ほど悠真を見たときは少し呆然としてしまった。今振り返れば、あまりよい態度ではなかったとも思う。
何よりも……蓮が気にしているのではないかと心配だった。
美咲はやはり堪えきれなかった。
「九条蓮……」美咲はそっと唇を噛み、少しためらってから尋ねた。「これから九条悠真は、たぶん頻繁にここへ来るよね。また顔を合わせるかもしれないけど、本当に平気?」
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