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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 695 - 高橋家はいつまでもお前の家だ

Chapter 695

高橋家はいつまでもお前の家だ

「でも……」

九条家本邸で九条のお祖父様と一緒に暮らすなんて、あまりにも不便だ。それに今、自分のお腹は偽物で、下手をすれば正体がばれてしまう。とにかく、本邸へ移り住みたくなかった。

九条蓮の目には、どうしようもないという色が浮かんでいた。

彼は眉間をつまみ、言った。「君がいない間に、お祖父様とお祖母様からもう頼まれたんだ。断りようがなかった。断れば、何か疑われるかもしれない」

九条家の大旦那様と大奥様は、妊娠中の高橋美咲をもっとよく世話するために言い出したのだ。

恐らく今は何も疑っていない。だが、九条蓮がその頼みを拒めば、その先はどうなるか分からない。

高橋美咲にとってあまりにも不公平で、未知の危険に満ちていることは、九条蓮にも分かっていた。それでもほかに方法はない。彼女の安全を守るため、全力を尽くすしかなかった。

「行かないとだめ?」高橋美咲は全身で拒絶を示していた。

彼女は、あの腹黒い白蓮、九条芽衣のことを思い出した。まさか彼女も、九条家の人々と一緒に暮らしているのではないだろうか。

高橋美咲は九条蓮を見上げ、尋ねた。「九条芽衣も九条家で暮らしているの?もし九条家へ行かなきゃいけないなら、私は嫌よ。もう二度と陥れられたくない」

前回の件では濡れ衣を着せられ、今もまだ解決していない。

あのとき、九条蓮も彼女の話を信じなかった。

そう考えると、高橋美咲の胸に悔しさが押し寄せ、九条蓮を見る目にも恨みがあふれた。

九条蓮は、あの日、高橋美咲がひどく傷ついたことを知っていた。一歩前へ出て彼女を抱き寄せ、優しい声で言った。「もう二度と、あんなことは起こさせない。必ず君の安全を守る」

高橋美咲は冷たく笑った。彼の約束に、何の意味があるというの?

あの日、九条芽衣は明らかに高橋美咲を殺そうとしていた。水に落ちたあとも、上から押さえつけ、水中へ沈めようとしたのだ。

あれは殺人だった!

高橋美咲が自分と一緒に九条家へ戻ることを拒んでいるのを見て、九条蓮もどうすればいいか分からなかった。

どうやら問題の鍵は、九条芽衣にあるようだ。九条芽衣の件を片づけて初めて、高橋美咲は胸にたまった恨みを吐き出せるのだろう。

それに高橋美咲は高橋家で心に傷を負っており、高橋彩花とあの女にも会いたくなかった。

以前、高橋家で暮らしていたのは、ほかに選択肢がなかったからだ。今は九条蓮と離婚していないのだから、当然二人で一緒にいるべきだった。

いつしか、高橋美咲の気持ちは少し揺らぎ始めていた。

彼女の表情がわずかに和らいだのを見て、九条蓮は低い声で説得を続けた。「美咲、あのときすぐに君を信じなかったのは俺が悪かった。一緒に九条家へ戻ることに同意してくれるなら、君の要求は何でも聞く」

九条蓮の言葉を聞き、高橋美咲は目を細めた。

要求は何でも聞く?

それなら、無理な話でもないかもしれない……

九条芽衣は一度、自分を陥れるのに失敗したのだから、きっとほかにも卑劣な手を用意しているはずだ。彼女が動くのを待つより、自分から先に手を打った方がいい。

高橋美咲はもう拒み続けなかった。九条蓮を見て言った。「分かった!一緒に九条家へ戻って暮らしてもいい。でも、あなたは私の言うことを聞いて、私がすることに協力して」

高橋美咲の承諾を聞き、九条蓮は張り詰めていた心をようやく落ち着かせた。

彼はずっと、高橋美咲と九条家の大旦那様のこじれた関係を修復し、美咲が大家族の中へ溶け込めるようにする方法を探していた。

その夜、高橋美咲は高橋家本邸へ戻り、これから数日間、九条家で暮らすことを高橋正人に伝えた。

高橋正人は何も言わなかった。

恐らく、高橋美咲が高橋彩花をどれほど嫌っているか知っていたのだろう。高橋美咲が部屋を出ようとしたときになって、ようやく言った。「荷物はここに置いておきなさい。これから九条蓮にひどい扱いを受けたとしても、お前にはまだ高橋家がある。高橋家はいつまでもお前の家だ」