Chapter 687
九条悠真はどこへ行ったの?(続き)
……
東京。
このところ高橋美咲が大阪で多くの出来事に巻き込まれていたことを、佐伯葉月は何も知らなかった。
高橋美咲が急に姿を消したことを不思議には思っていた。1、2度見かけたときも、高橋美咲は慌ただしく、心ここにあらずといった様子だった。しかし深く考える暇もないまま、二人の売上勝負の結果が発表される日を迎えた。
佐伯葉月は晴れやかな得意顔で部下を引き連れ、九条インターナショナルへ向かった。
オフィスへ入る前、彼女は振り返り、隣にいる若いアシスタントに尋ねた。「計算した結果、Niaの売上はメゾン・ヴェルヌより上だったのね?」
佐伯葉月自身も2日前に概算を出していた。だからこそ、今日は自信満々で現れたのだ。
アシスタントはすぐに答えた。「本当です。今回は絶対に私たちの勝ちです。以前、高い報酬で招いた新しいデザイナーたちが素晴らしい作品をたくさん発表し、すでに大ヒット商品になっています。一方、高橋美咲の方はまだデザイナーを一人も採用できていません。私たちに勝てるはずがありませんよ」
それを聞き、佐伯葉月は得意げな満足感を顔いっぱいに浮かべた。
その後、彼女はさらに何人ものデザイナーを高額報酬で引き抜き、ジュエリーのデザインを任せた。彼らが生み出した人気商品は、ほとんど完売していた。
ただ、売れ筋商品の中には、いつも自分たちの上を行くデザイナーが数人いた。彼らと連絡を取ろうと手を尽くしたが、つてがまったくなく、どうしてあの数人がそこまで高慢なのか理解できなかった。
同じ頃、高橋美咲もアシスタントの森川茉莉とともに九条インターナショナルへ到着した。
遠くに佐伯葉月を見つけると、森川茉莉はすぐ高橋美咲の耳元へ顔を寄せ、声を落として言った。「高橋マネージャー、あとから入ったデザイナーたちは、新作を出すたびに佐伯葉月の側を圧倒しています。あちらはずっと私たちのデザイナーを引き抜こうとしているんですが、残念ながら誰にも相手にされていません。今でも、あのデザイナーたちがこちらの所属だとは知らないんです」
話に出た3人のデザイナーについて、高橋美咲は当初、彼らが自分から来てくれたものだと思っていた。だが、九条蓮の正体を知ったあと、実は彼が自分のために見つけてくれたのだと分かった。
あの人は、人知れずこんなにも多くのことをしてくれていたのだ。
九条インターナショナル最上階の会議室。
今日は佐伯葉月がNiaを、高橋美咲がメゾン・ヴェルヌを代表していた。二人は会議室で向かい合って座っている。室内は静かだったが、なぜか目に見えない火薬の匂いが漂っていた。
中央の席には、明おじさんが無表情で座っていた。
このような場に九条会長が自ら出席することはない。明おじさんを派遣したことが、そのまま会長の代理を務めさせるという意味だった。
九条会長が双方の勝負の結果を把握できるよう、明おじさんはライブ映像をつないでいた。九条会長側の画面は黒いままだったが、こちらの様子ははっきり見えている。
佐伯葉月のアシスタントは、高橋美咲と森川茉莉に得意げな視線を向けた。二人が落ち着き払っているのを見て、思わず冷笑した。「よくそんなに平静でいられますね。メゾン・ヴェルヌは明らかに私たちNiaに負けているのに。まさか、本当にまだ勝ち目があると思っているんですか?」
隣にいたNiaの社員も軽蔑の表情を浮かべ、笑いながら言った。「そうですよ。今回は私たちの圧勝です。もう祝勝会の手配まで済ませてあります。終わったら、そのまま会場へ向かえますよ」
森川茉莉はそっと高橋美咲の服を引き、耳元で囁いた。「Niaの人たち、馬鹿みたいですね。私、こっそり計算したんです。通常商品の売上だけを比べれば、確かに私たちは勝てません。でも、あの有名デザイナー3人の大ヒット作を加えれば、こちらの圧勝です」
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