Chapter 68
心臓が止まりそうな夜
「あの……ナプキンを用意してなくて。買ってきてもらえますか?」高橋美咲は気まずそうに頼み、さらにおそるおそる「無理なら大丈夫です。少し休んだら自分で買いに行きますから」と付け加えた。
以前も同じようなことがあった。生理前に気をつけていなくて、急に始まってしまったのだ。
その時は痛みに耐えながら九条悠真に電話して助けを求めた。
あの時、九条悠真は「男がナプキンなんて買えるわけないだろ、笑われる」と言い、温かいお湯を飲めとしか言わなかった。結局、少し回復してから自分で買いに行ったのだった。
だから今、九条蓮にこんなことを頼むのは少し不安だった。きっと嫌がるだろうし、期待もしていなかった。
意外にも九条蓮は何も言わず、ただうなずいて「うん。ちゃんと休んでろ」とだけ言った。
彼は鍵を持って外に出ていった。
彼が出ていくのを見送った後、高橋美咲はぼんやりしてしまい、胸の奥にじんわりとした温かさが広がった。
本当に行ってくれたの?
九条蓮は本当に優しくて思いやりのある人だった。
ほどなくして九条蓮が戻ってきた。黒い袋を手にしていた。その頃には高橋美咲もだいぶ楽になっていて、すぐに袋を受け取り、ベッドから降りてトイレで汚れた下着を替えた。
汚れた下着を洗ってから部屋に戻った。
さっきシーツも汚れてしまったようだった。高橋美咲がシーツを替えていると、九条蓮が入ってきて、彼女の手から布団を取った。「休んでろ。俺がやる。」
高橋美咲は少し恥ずかしかったが、おとなしく近くの椅子に腰掛けた。
九条蓮が不器用にシーツと格闘する姿を見て、彼の魅力が心の中で一気に跳ね上がった。
一緒に暮らすと本当にいろんなことが経験できるし、相手のことを知るには一番早い方法だと実感した。
今はもう、勢いで結婚したことも嫌じゃなくなってきた。
それどころか、なぜか少しだけ密かに嬉しくなっている自分がいた。
やがて九条蓮がシーツを整え終わった。彼が部屋を出ようとした時、高橋美咲は外の小さなソファのことを思い出した。彼の大きな体ではあそこでは窮屈で寝苦しいだろう。
ここまでしてもらって、今さら外で寝てもらうのはあまりにも冷たすぎる。
それに、生理中だから何かされる心配もない。
少し考えてから、高橋美咲は気まずそうに「えっと……外のソファは寝心地悪いから、部屋で寝て」と言った。
九条蓮はその場で少し立ち止まり、やがて戻ってきた。
二人はベッドに並んで寝た。間には布団を一枚挟み、まるで楚河漢界のようにきっちりと境界線を作った。それぞれが自分の側で、干渉し合わずに横になった。
高橋美咲はしばらくぼんやりと考え事をして、そのまま眠りに落ちた。
うっすらとした夢の中、息苦しさを感じて目を覚ますと、九条蓮が境界線を越えてきていた!
また彼女を抱き枕にしていたのだ。
さっきまであんなに優しかったこの人を思い出し、高橋美咲は静かにため息をつき、押しのけることもせず、そのままにしておいた。
翌朝、夜明けの光が障子越しに差し込み、ベッドの上でしっかりと抱き合う二人を照らしていた。
九条蓮は目を開け、最初の瞬間に自分の手が何か柔らかいものに触れていることに気づいた。指先でそっと動かしてみる。
次の瞬間、自分が何を握っているのか理解した途端、瞳孔がキュッと縮み、まるで電気に打たれたように手を引っ込めた。
自分の手をじっと見つめ、言葉にできない感覚に包まれる。あの柔らかい感触が、まだ頭の中に残っている気がした。
ふわふわで弾力があって——もう一度触れたくなる。
視線を下げると、たくましい太ももがまだ高橋美咲の体にかかっているのが見えた。
九条蓮は深く息を吸い、鼻筋をつまんだ。
高橋美咲は本当に何も悪くない。夜寝ているとき、自分がだらしないだけなのだ。
九条蓮はそっと足を引いた。その瞬間、高橋美咲が目を開け、二人の視線が重なった。
「おはよう」と高橋美咲が挨拶する。
「おはよう」
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