Chapter 676
君はまだ、僕の妻だ(続き)
九条蓮の非難めいた言葉に、美咲は一瞬気まずそうに顔を赤らめた。誤解されたくなくて、慌てて「違うの、誤解しないで。私のせいであなたが困ると思って、わざとそう言っただけ」と説明した。
九条蓮の胸に顔を埋めるようにして「本当は私も、あなたと離婚したくなかった」と小さな声で呟いた。
ここ数日の小さなすれ違いは、思いがけずあっさりと解けた。
紆余曲折はあったが、悪いことばかりではなかった。少なくとも九条家の大旦那様が二人のことを認めてくれたのだ。ただ、妊娠の件はすぐにバレてしまいそうだけど……。
高橋美咲は九条蓮を見上げ、不安を口にした。
だが意外にも、九条蓮はまったく動じる様子もなく、むしろ意味深な笑みを浮かべて美咲を抱き上げた。
「じゃあ、今から頑張ろう。すぐにお祖父様の願いを叶えられるよ」
「待って!」高橋美咲は慌てて九条蓮にしがみついた。まだ心の準備ができていない。
「美咲、急がないとお祖父様の方が待てないよ」そう言うと、九条蓮は寝室のドアを蹴って開けた。
広い一戸建てには二人きり。どんな大胆なことだってできる。
ここで初めて高橋美咲は、九条蓮が大阪に戻ってからこの家に自分を引き留めた本当の理由に気づいた。最初から下心があったのだ。
九条蓮は美咲をベッドに下ろし、自分のシャツのボタンを外し始めた。
その様子を見て、高橋美咲の顔はみるみる赤くなった。
何度も体を重ねてきたはずなのに、今回はなぜか特別に感じる。九条蓮の何気ない仕草だけで、何年も肉を食べていなかったかのように胸が高鳴る。
九条蓮の体は昔から素晴らしかった。引き締まった滑らかなライン、男らしい筋肉。
まるで雑誌から抜け出してきたモデルのようだ。
初めて九条蓮を偶然見かけた時も、思わず鼻血が出そうになったものだ。今でも彼の体に飽きることはなかった。
美咲の恥ずかしそうな表情を見て、九条蓮は微笑みながら「一回で足りるかな」と囁いた。
その言葉に高橋美咲は思わず枕に顔を埋めたくなった。
なんて恥ずかしいことを言うの……。
二人の甘い攻防は長く続き、高橋美咲はこのまま死んでしまうのではないかとさえ思った。
……
翌朝、高橋美咲は電話の着信音で目を覚ました。
体を起こしてスマホを見ると、高橋正人からの着信だった。そこでようやく、今日は高橋グループに出社する日だったことを思い出した。すっかり時間を忘れていた!
高橋美咲は慌てて起き上がり、着替えを始めた。
新しい服を持ってきていなかったので、仕方なく昨日の服をもう一度着るしかなかった。幸い、特に目立つことはなかった。
九条蓮もすでに身支度を整えていた。疲れた様子の美咲を見て「今日は休んだら?一日ゆっくりしてから高橋グループに行けば」と声をかけた。
「だめ!」高橋美咲は首を振り、「高橋彩花が私の失敗を待ち構えてるんだから、絶対に隙を見せられない」と言った。
美咲の強い意志を見て、九条蓮はそれ以上何も言わなかった。
本当は会社まで送っていきたかったが、美咲は九条家の大旦那様の言葉をしっかり覚えていて、九条蓮が板挟みになるのを恐れ、送迎を断り、自分でタクシーを呼んで高橋グループへ向かった。
九条蓮が九条ホールディングスに到着したとき、九条凛が待ち構えているとは思ってもみなかった。
明らかに、彼女は二人の間で何が起きているのかを見張るためにわざわざ来ていた。九条蓮の姿を見つけるや否や、恥ずかしげもなく駆け寄り、にこやかに「蓮、昨夜はちゃんと眠れた?お義姉さんとのこと、もう解決した?私の作戦、うまくいったでしょ?」と話しかけた。
You might also like




