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裏切った婚約者の叔父と、間違って結婚しました

Ch. 654 - 高橋美咲が気にならないはずがない(続き)

Chapter 654

高橋美咲が気にならないはずがない(続き)

気づけば、高橋美咲は彼にとってこんなにも大切な存在になっていた。

九条凛は何も言えるはずもなく、曖昧に答えた。「ううん、特に何もないと思うよ。もし何かあったら、絶対に美咲さんに伝えるし。どうかしたの?」

一拍置いて、わざとらしく聞き返すその声は、妙に自然だった。

高橋美咲の心配は徐々に和らいでいった。彼女は小さくため息をつき、「そっか、じゃあ邪魔しないようにするね。おやすみ。」と告げた。

通話を切った後、九条凛はようやく大きく息を吐いた。うっかり何か口を滑らせるのではと、本当に怖かった。

幸い、高橋美咲は何も疑っていなかった。

九条蓮と高橋美咲のことが心配ではあったが、九条凛は自分は部外者で、何も変えられないと分かっていた。車のドアを開けて「お兄ちゃん、じゃあね」と言った。

九条凛が去った後、九条蓮は静かに車内に座り、スマートフォンを手に取った。

そこには高橋美咲からのメッセージが届いていた。「九条家のことはもう終わった?いつ帰ってくるの?」と。

九条蓮の目は再び暗くなり、エンジンをかけて車を走らせた。

一軒家の中は真っ暗で、寝室の明かりだけが灯っていた。高橋美咲は眠くなるまで待って、そのまま寝入ってしまったのだろう。

九条蓮は寝室のドアを開けて中に入った。部屋にはランプが一つだけ灯り、高橋美咲はベッドで静かに横たわり、顔を枕に埋めて、柔らかな黄色い光に包まれていた。

九条蓮はしばらくベッドのそばに立ち、結局、高橋美咲を起こさなかった。

彼はバスルームでシャワーを浴び、再びベッドに戻ると、高橋美咲の隣に横になった。彼女はその気配を感じたのか、寝返りを打って九条蓮の腕の中に潜り込んできた。安心できる場所を見つけると、再び深い眠りに落ちていった。

九条蓮はそっと彼女を抱きしめた。

もし本当に別れなければならないのなら、高橋美咲にはこれから少しでも幸せに生きてほしいと願った。

翌朝。

高橋美咲が目を覚ますと、一瞬ぼんやりした。周りを見渡して、ようやく昨日、九条蓮と一緒に高橋家の誕生日パーティーに出席したことを思い出した。そして帰り際、高橋正人に呼ばれて、九条蓮と一緒に書斎に入り、その後、自分だけが先に退出させられ、九条正人が九条蓮と二人きりで話したのだった。

それに、昨夜は高橋彩花からの電話もあった!

高橋美咲は一気に目が覚め、布団を跳ねのけてベッドから飛び起きた。

隣のシーツにはわずかなシワが残っていて、昨夜九条蓮が戻ってきてここで寝た証拠だった。しかし朝になって彼の姿はなく、どこへ行ったのか見当もつかなかった。高橋美咲は急いで身支度を整えた。

慌てて階下に降りると、九条蓮が椅子に座っているのが見えた。

彼は漆黒のシャツに黒のスラックスを身にまとい、気品と非凡さを漂わせ、全身からどこか神秘的で近寄りがたい雰囲気を放っていた。

高橋美咲はしばらくその場に立ち尽くし、九条蓮の圧倒的な美貌に見とれてしまった。どうして男の人がここまで綺麗なんだろう、と感心せずにはいられない。以前は九条蓮のことをただの運転手だと思っていた自分が信じられなかった。こんな存在感のある人が、普通の人であるはずがない。

物音に気づいた九条蓮が顔を上げ、高橋美咲の方を見た。

そして低い声で「美咲、朝ごはんを食べよう。食べ終わったら、君を連れて行きたい場所がある」と言った。

高橋美咲は驚きながら向かいに座った。「どこに連れて行くの?」

九条蓮は真剣な表情で「すぐにわかる」とだけ答えた。

彼は高橋美咲を九条久遠に会わせ、そこで全てを話すつもりだった。そうすれば、少しは受け入れやすいかもしれないと思ったのだ。